東頭のことを知ったのは、別の仕事で日本茶インストラクターのブレケル・オスカルさんのインタビューをしたことがきっかけだった。スウェーデン人ながら日本茶に魅了されて来日したブレケルさんは、現在、日本茶の伝道師として国内外を駆け巡っている。日本茶に精通するブレケルさんが「今、日本一だと思います」と話していたのが、東頭だった。もちろん、価格のことではなく、味の評価だ。
小杉さんが作る東頭を扱う唯一の原料茶メーカー「葉桐」の葉桐清巳社長も、「日本一」と太鼓判を押す。
「栽培から製造工程まで、良いお茶を作るためにできること、考えつくことをすべてやっているのが東頭です。私は40年この仕事をしていますが、ここまで徹底的にこだわって作っているお茶は見たことがありません」
ここで東頭と小杉さんの話をする前に、あまり知られていない日本茶の世界について触れようと思う。僕もそうだったけど、日本茶に詳しくない人なら、え、そうなの!? とビックリすること請け合いだ。
まず、日本で栽培されているお茶の品種について。なんと75%は「やぶきた」という品種で、僕らが普段、なにげなく飲んでいるお茶のほとんどが「やぶきた」である。
そして、一般的に売られている茶葉は売り物になる過程で均一品質、大量生産、安価提供を実現するために、軒並み「ブレンド」されている。要するに、「〇〇茶」という商品は、たくさんの生産者から集めた茶葉を混ぜ合わせて作られているのだ。世の中にはたくさんの日本茶が売られているけど、シンプルに言えばほぼやぶきたのブレンド茶なんです。
この事実を知った時、なるほど! と納得した。僕は日本茶が好きで、いろんな産地のものを買って飲むんだけど、ぶっちゃけ、そんなに味の違いが判らなかった。僕が買うお茶は高いものではないし、味音痴の可能性もあるとはいえ、例えばワインみたいにハッキリとした差異は感じられなかった。その理由がやぶきたという品種、ブレンドという作り方にあったのだった。

川内イオ