一番奥のスタジオは、真っ暗な空間に二面の大きなスクリーンが置かれた、イリカの《最も長い波に乗って》というインスタレーションだ。「人間と地球との身体的なつながりに関心がある」と言うイリカは、自分が関心をもつ現象を組み合わせた映像作品などを制作している。
スタジオの中の左右のスクリーンは、一見するとそれぞれ全く違う映像だ。左側は守谷に来る前に撮影したという、滔々と流れるアマゾンの川面、右側は暗闇の中でクローズアップされ、延々と続いていく手の美しい動きだ。これは守谷に来てから、合気道の動きをリサーチして撮影したものだという。地球上の遠く離れた場所で撮影された全く違う2つの映像は、不思議とリズムが合っていて、いつまでも見入ってしまう空間になっている。
キッズツアーに参加していた小学生4年生の女の子、たまきちゃんとその家族。実は家族でイリカの映像作品の制作に関わっている。あの手の映像は、たまきちゃんのお父さんの手を写したものなのだ。撮影現場から見学していたというたまきちゃんに、感想を聞いてみた。現場ではお父さんは真っ黒な服と帽子を被り、手の動きだけをクローズアップしてスロー撮影されたのだという。自分で見ていた撮影現場と、実際に出来上がった映像が全く違っていて、「手が浮いているように見えてびっくりした!」とたまきちゃん。
アーティストの制作現場に親子で参加できて、とても良い体験になったようである。

松本美枝子