未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
127

「アーカスプロジェクト」は世界と守谷をつないでいる

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.127 |10 December 2018
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#3制作現場に触れる

 一番奥のスタジオは、真っ暗な空間に二面の大きなスクリーンが置かれた、イリカの《最も長い波に乗って》というインスタレーションだ。「人間と地球との身体的なつながりに関心がある」と言うイリカは、自分が関心をもつ現象を組み合わせた映像作品などを制作している。
 スタジオの中の左右のスクリーンは、一見するとそれぞれ全く違う映像だ。左側は守谷に来る前に撮影したという、滔々と流れるアマゾンの川面、右側は暗闇の中でクローズアップされ、延々と続いていく手の美しい動きだ。これは守谷に来てから、合気道の動きをリサーチして撮影したものだという。地球上の遠く離れた場所で撮影された全く違う2つの映像は、不思議とリズムが合っていて、いつまでも見入ってしまう空間になっている。

《最も長い波に乗って》©Erica van Loon

 キッズツアーに参加していた小学生4年生の女の子、たまきちゃんとその家族。実は家族でイリカの映像作品の制作に関わっている。あの手の映像は、たまきちゃんのお父さんの手を写したものなのだ。撮影現場から見学していたというたまきちゃんに、感想を聞いてみた。現場ではお父さんは真っ黒な服と帽子を被り、手の動きだけをクローズアップしてスロー撮影されたのだという。自分で見ていた撮影現場と、実際に出来上がった映像が全く違っていて、「手が浮いているように見えてびっくりした!」とたまきちゃん。
 アーティストの制作現場に親子で参加できて、とても良い体験になったようである。

たまきちゃん一家
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未知の細道 No.127

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。