未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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吹奏楽酒場、楽器のあるMusic Bar、ハモリ専門ショットバー

音を肴にハシゴする音楽酒場めぐり

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.135 |10 April 2019
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#3仲間に「おかえり」と言える場所

ひとりでお酒や食事も作りつつ、常連さんとの時間が楽しそうな渡部さん

続々とカウンターを埋めていく常連さんたちの「昨日ぶりだね」「先週のあのときさ」という会話から、頻繁にここで顔を合わせていることがわかる。なかには、「宝島。」に惚れ込み、ほぼ毎週末、県外から1時間以上かけて通っている人もいた。

「吹奏楽の話って、どこでも誰でもできるわけじゃないんですよね。でも、ここだったら好きなだけコアな話もできる。そして他のお客さんと仲良くなると『明日は誰が来ているかな』って会えるのが楽しみになるんです」

確かに渡部さんを筆頭に、「あの学校の演奏はすごかったな」「この曲はこうだよね」と話をしていると、ますます吹奏楽愛が深まっていく気がする。熱く語るうちに気づけば朝になっていた、ということもあるそうだ。仲良くなったお客さん同士でごはんを食べに行ったり、お互いの演奏会に応援に行ったりする温かな関係。

「でも吹奏楽に関係ない話もたくさんしていますよね。マスターの趣味で、他のジャンルの音楽酒場になっちゃうこともあるし」

笑い合う常連さん同士は、ただの飲み友達以上に仲がいいように見える。吹奏楽という共通のつながりを持っていることで、学生時代の部活仲間のような関係になっているのかもしれない。私も「何の楽器担当に見えます?」と元吹奏楽部ならではの自己紹介をしたら、とても初めて訪れたとは思えないくらい居心地が良くなった。

映像を見ながら吹奏楽について語り合って、そのまま朝になることも

「仲間が増えたことが、このお店をやってて一番嬉しいことですよね。『吹奏楽』という共通のキーワードのおかげで、北は北海道から南は九州まで、全国から多くの人がここに来てくれるんです。音楽好きに、悪い人はいませんからね」

お店をやっていてよかったことを聞いてみると、渡部さんは少し酔いが回ってきたような口調で言った。また扉が開いて、お客さんが入ってくる。

「おかえりなさーい」

常連さんが入ってくるたびに、渡部さんや他のお客さんが声をかける。音楽でつながった人々が作り出すアットホームな雰囲気は、いつまでも居続けたくなるものだ。名残惜しくて最後にもう1杯、2017年の全日本吹奏楽コンクールの課題曲マーチ『春風の通り道』という名前のついたオリジナルカクテルを頼んだ。

全日本吹奏楽コンクール課題曲カクテル、2017年のマーチ『春風の通り道』(左)と2016年のマーチ『スカイブルー・ドリーム』(右)
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
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