前日、館鼻岸壁朝市を運営する協同組合湊日曜朝市会の慶長春樹理事長に話を聞いた。慶長さんによると、その距離800メートルほどの岸壁に沿うように、324店舗が出店している。期間は3月中旬から12月、朝市が開いているのは夜明け(!)から午前9時頃まで。いつも朝の4時過ぎにはすでにお客さんがやってくるそうだ。
「八戸の人は朝市が好きなんですよね。八戸では10カ所ぐらいで朝市が開催されていて、朝起きたらみんな近所の朝市に行ってブラブラするんです。冬なんて、真っ暗ななか懐中電灯を持ってくる人もいますよ」
懐中電灯を持参する朝市はもはや朝市と呼べるのかわからないが、人ごみのなかを歩き始めてすぐに気づいたのは、お祭りでよく見かける、いわゆる「業者」のような出店がないこと。出店者の皆さんは見るからに地元のおとうさん、おかあさん、おねえちゃん、おにいさんで、そのせいか、とてもほのぼのした雰囲気だ。そして、売っているものがとんでもないほどバラエティに富んでいる。場所柄、最も数を占めているのは魚介だけど、ほかの商品もバリエーションがハンパじゃない。
僕が注目したのは、改装した軽トラで売られていたミシン! 思わず、売り場のおじさんに「ここでミシンを買う人、いるんですか?」と失礼な質問をしてしまったけど、おじさんは「はい、いますよ」と余裕の笑顔。「ええ!? じゃあ、これまでに売れたミシンで一番高いのを教えてください」と尋ねると、おじさんは仏のような微笑を浮かべて「64万円のものですね。しばらく悩んでいた男性が買っていきました」。朝市で64万円のミシンを買う男……思わず目を白黒させてしまった。