もうひとつ、毎週日曜に2万人の人を惹きつける大きな理由は食べ歩きだろう。カウント不可能なほど多種多様な食べ物が売られていて、食べ歩きが好きな人にとっては天国のような朝市だ。僕がタンドリーチキンの後に買ったのは「うなぎの飯蒸し」(380円)。笹でくるまれてしっかり蒸されたうなぎともち米のハーモニーは絶妙で、2つも3つも食べたくなった。この後、のどが渇いたので無添加のニンジンジュースを飲んだ。これもまたビックリするほどジューシーで美味い。
「店がありすぎ! ご飯の種類もすごくてびっくりしました!」と言っていたのは、青森を旅行中の神奈川県から来た女の子ふたり。朝6時に来てから小籠包、せんべい汁、焼き鳥、豚の軟骨、お餅を食べたそうで、「惜しみなく、後悔なく食べないと!」と力強い。
地元出身で、この春に高校を卒業したばかりの18歳の女の子ふたりも負けず劣らず、ラーメン、から揚げ、こんにゃく、リンゴ飴、メロンパン、豆腐ドーナツを食べたそう。
食べ過ぎ! と思うかもしれないけど、ひとつずつの量や数がそれほど多くないし、なによりも祭りの夜店と同じように五感をビシビシ刺激されてついつい財布のひもが緩むのだ。
地元出身の18歳に「おすすめはありますか?」と聞いたら、「八戸と言ったらせんべい汁、絶対食べてください。美味しいです!」。絶対とまで言われたら食べないわけにはいかないでしょう。たまたま、ふたりもせんべい汁で朝食を締めるというので同席させてもらった。
連休中にディズニーランドに行くというふたりに「絶対混むと思うけど、攻略法はありますか?」と聞かれ、「20年も行ってないのでわかりません」と答えて「え~」とため息をつかれながら食べたせんべい汁は確かにいい出汁が利いていて、腹に染みた。
気づけば8時半。あっという間に2時間半が経っていた。僕はほかの地域の大きな朝市に行ったこともないし、出店数や来場者数に関しては常に変動するものだ。「もっと多い」というところもあるかもしれない。でも、館鼻岸壁朝市は間違いなく日本一と確信した。その多彩な混沌がもたらす出会いの豊かさにおいて、これ以上の朝市はないはずだ。ああ、今から考えてしまう。次はどんなものが見つかるだろう? 次は何を食べようか?