まず、モリウミアスの概要を説明しよう。ここは「豊かな自然と人、そして多様な環境から集まるこども達が学ぶ場」と定義されていて、1泊か2泊の短期訪問プランや7泊8日の滞在型プランを提供している。主に小・中学生が参加し、サステナブル(持続可能性があること)な暮らしや、雄勝ならではの森、海、田畑での体験を、漁師や農家の力も借りながら行うのだ。
モリウミアスは、その施設だけでなく雄勝というフィールドを広く学ぶ場に据えているのが特徴で、体験のなかには、地元の人と関わるものも多い。まず案内されたのが、「雄勝ローズファクトリーガーデン」。ここは、雄勝の入り口にあたり、海からは離れてはいるが震災の被害は大きかった場所。


家を流され、大切な人も失った徳水利枝さんは、震災後数ヶ月して「この土地がただ津波で流された場所になるのはいたたまれない」と花を植え始めた。花を育てたこともなかった徳水さんだが、ガーデニングや石積みの専門家、多くのボランティアの協力があり、今では見事な花園を作り出した。とくにバラのシーズンには絶えず大勢が訪れる名所だ。
雨でしっとりと濡れたローズガーデンを散歩し、震災からこれまでの話を聞いた。「つながりを絶やしていけないと思うんです。復興にとどまらず、ここで何をしていくかが大切」と徳水さん。この言葉は、この後モリウミアスの代表である油井元太郎さんから聞いた話のなかでも、表現こそ変わりすれ、繰り返し聞くことになった言葉だ。雄勝で未来を描く人びとは、それぞれの仕事をしながらつながっている。