未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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海と森のあいだの学び舎で

サステナブルな暮らしを体験

文= 小野民
写真= 小野民
未知の細道 No.141 |10 July 2019
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#3のべ5000人でつくったモリウミアス

廃校になった小学校をリノベーションしたモリウミアス。

モリウミアスと聞いて、すでに感づいている人もいるだろうが、「森」、「海」、「明日」がモリウミアスの名前の由来だ。 ここは最初から宿泊施設だったわけではない。モリウミアスの基礎をつくり、「公益社団法人MORIUMIUS」の理事も務める油井さんは、東日本大震災当時は、立ち上げから関わってきた子どもの職業体験施設「キッザニア」の社員だった。

モリウミアス理事の油井元太郎さん。雄勝で暮らし、「若いスタッフの父親的な役割かも」と笑う。

震災を機に知人の実家が仙台にあった友人との縁で宮城県に通い始め、支援の手が届きにくい雄勝での炊き出しに始まり、やがて地元の人のニーズに応えて教育や学びの領域にシフトしていった。

最初は学習支援団体として、放課後塾を。だんだん教室を飛び出して、漁師に協力をお願いして子どもと漁をしたり、地域の農家の畑で米や野菜を育てたり、収穫したものを使ってみんなで料理するなどの活動に発展していった。その活動が縁で2013年、廃校になっていた旧桑浜小学校を引き継ぐことになり、ここを拠点に学びの場をつくる、一大事業が始まった。

室内にいても、廊下や共有スペースに窓がないので開放的。寺のつくりも参考にしたという、自然と調和するつくりだ。
壁や屋根に使われているのは、雄勝名産のスレート。丸い輪郭のスレートを作る技術は伝承されておらず、かつて使われていたものを再利用している。(左)、築100年に近い木造建築は、建設当時船大工が建てたものだそう。下から見上げると船底と同じ要領で作られたという天井が見える。(右)

「ここの煙突から煙が出ていると、今日も子どもたちが来ているんだなって嬉しくなる」とは地元の人にスタッフが言われた言葉だ。

「廃校がよみがえるというのは、復興とはまた別の大切な出来事です。復興からまちづくりへ。現代社会で失われている生きること、暮らすことの実感を取り戻すことは、子どもの未来にとってもとても大切なことです」と油井さん。

隈研吾氏や手塚貴晴氏をはじめとする建築家と、スタンフォード大学などの建築学生たちのデザインワークショップから建物のデザインはできあがっていった。旧桑浜小学校は、毎週末200〜300人、のべ5000人もの力で再び子どもの声がこだます場所へと生まれ変わった。現在は、学校の横にアネックス棟も完成し大人の合宿も行えるようになっている。

モリウミアスのアネックスは大人の共同宿泊施設。設計は中村好文氏。

モリウミアスの建物や、取り巻く環境を見ると、なるほど「サステナブル」がどんどん腑に落ちてくる。

生活排水はバイオジオフィルターを通じて浄化して再利用する。そのため、ここで使う石鹸やシャンプー、洗剤などはすべて自然に還るものを使っている。

ぐるりと自然に内包された感覚が、風の通る校舎のなかで呼び覚まされる。

排水は、瓦の微生物と水生植物をできれいにするバイオジオフィルター。隣の田んぼでは黒米を育てる。(左)、モリウミアスでは、自然に分解される備え付けのアメニティを使う。(右)
廊下のすぐ横では原木シイタケ栽培。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
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