モリウミアスと聞いて、すでに感づいている人もいるだろうが、「森」、「海」、「明日」がモリウミアスの名前の由来だ。 ここは最初から宿泊施設だったわけではない。モリウミアスの基礎をつくり、「公益社団法人MORIUMIUS」の理事も務める油井さんは、東日本大震災当時は、立ち上げから関わってきた子どもの職業体験施設「キッザニア」の社員だった。
震災を機に知人の実家が仙台にあった友人との縁で宮城県に通い始め、支援の手が届きにくい雄勝での炊き出しに始まり、やがて地元の人のニーズに応えて教育や学びの領域にシフトしていった。
最初は学習支援団体として、放課後塾を。だんだん教室を飛び出して、漁師に協力をお願いして子どもと漁をしたり、地域の農家の畑で米や野菜を育てたり、収穫したものを使ってみんなで料理するなどの活動に発展していった。その活動が縁で2013年、廃校になっていた旧桑浜小学校を引き継ぐことになり、ここを拠点に学びの場をつくる、一大事業が始まった。


「ここの煙突から煙が出ていると、今日も子どもたちが来ているんだなって嬉しくなる」とは地元の人にスタッフが言われた言葉だ。
「廃校がよみがえるというのは、復興とはまた別の大切な出来事です。復興からまちづくりへ。現代社会で失われている生きること、暮らすことの実感を取り戻すことは、子どもの未来にとってもとても大切なことです」と油井さん。
隈研吾氏や手塚貴晴氏をはじめとする建築家と、スタンフォード大学などの建築学生たちのデザインワークショップから建物のデザインはできあがっていった。旧桑浜小学校は、毎週末200〜300人、のべ5000人もの力で再び子どもの声がこだます場所へと生まれ変わった。現在は、学校の横にアネックス棟も完成し大人の合宿も行えるようになっている。
モリウミアスの建物や、取り巻く環境を見ると、なるほど「サステナブル」がどんどん腑に落ちてくる。
生活排水はバイオジオフィルターを通じて浄化して再利用する。そのため、ここで使う石鹸やシャンプー、洗剤などはすべて自然に還るものを使っている。
ぐるりと自然に内包された感覚が、風の通る校舎のなかで呼び覚まされる。

