「コケコッコー」前日の夜は宴会をじっくり楽しもうと思っていたのに、いつも通り娘と9時過ぎに眠ってしまった。その代わり、朝はバッチリ目が覚めた。というよりも、4時から勇ましく鳴く雄鶏に起こされたのだ。モリウミアスでの朝は家畜とともにある。
バイオジオフィルターで排水を浄化して再利用するのと同じように、食べ残しなどを家畜の排泄物と一緒に堆肥にし、土に還すことで良質な有機質肥料として利用している。無論、いい土で育つ野菜は生き生きとしておいしい。それを私たちはまた食べる。そんな循環を家畜との暮らしは可能にする。
鶏のほかにも、豚とヤギがいて、それぞれ子どもたちにも人気だけれど、あくまでもペットではなく家畜。オスの豚は愛情を持って育てられたあと、出荷されて肉となり、余すところなく加工され、1頭でモリウミアスの約1年ぶんの食料になるという。




この日は、朝食のあと、地元の漁師さんに漁船に乗せてもらい、ホヤ養殖の漁場へ。プログラムの中で、季節によってホタテ、カキ、ホヤなどの収穫を体験し、漁師の仕事について話を聞く機会を持つ。この時は、ちょうどホヤの収穫時期。船上で食べるホヤは、臭みがなく濃厚な甘みだった。季節によっては、鮭を1尾丸ごと裁く体験などもあるそうだ。
それにしても、前日の徳水さんといい、この日の漁師さんといい、地域の先生とモリウミアスの人々がひとつながりになっている。そんな感想を話すと、モリウミアスのスタッフ歴2ヶ月のダビデさん(スタッフはみな、ニックネームで呼ぶ)は、「先輩たちのおかげですね。最初から地域の人たちと一緒にできていたわけではありません。スタッフたちがちょっとずつ地域に溶け込んでいったからこそ、こうやって協働してやれている。そうそう、僕も来週から1週間は漁師さんのところにウニの収穫の手伝いに行くんですよ」。
そうなのだ。ここを訪れる子どもたちが、数日でもしっかりと本物の体験ができるのは、スタッフたちが皆、日々の暮らしのなかで、サステナブルで土地に根ざした暮らしをしているからに違いない。
圧倒的に子どもの生活のなかに外遊びが少なくなっているという。それはきっと、自然体験というだけでなく、家の外に出れば当たり前に会話したり、助け合ったりするご近所さんとの付き合いの減少をも示唆している気がする。モリウミアスを取り巻く地域の人たちとのつながりも、子どもが学ぶべきことなのではないだろうか。