現在うどん部の部員は、男3女2の計5名。なかには、中学生の頃にイベントでうどん部の存在を知って、高校生になってから「ぜひ入りたい」と入部した人たちもいる。部長の今野翼さんもその一人。幼い頃から将来はうどん屋になることを夢見て、今も実現に向けてうどん作りの腕を上げている。
実は私は、今野さんには2年前に取材をしたことがある。あのときはまだ先輩がいてちょっと頼りない風情だったのに! 久しぶりに会うとすっかり部長然としているではないか。そりゃあ、これだけのことをやっていたらしっかりするよなぁと納得もする。
例えば、『Udon navi』。毎年最新版を発行するのだが、昨年度の部数はなんと7万部! 夏休みや冬休みに市内全店舗、ときには市外の店も取材して周り、記事を書くのもデザインソフトを使ってのデザインも、すべて部員たちでやってのける。資金調達も自分たちの売上や助成金を利用している。
「一番大変なのは、記事を書くことですね。それぞれの店の特徴を書き分けて表現するのに苦労しました」(大久保先生)。紹介するのはすべてうどん。その苦労を思うと、ひとつの食堂紹介でさえ云々唸って書いている私はゾッとさえしてしまうが、さまざまな媒体を見ながら研究するというだけあって、魅力的なキャッチコピーが踊る。
いくつか紹介すると、「ダシのうまみがたっぷり詰まった至極の一杯!(門々利うどん)」、「ひとくち啜ると感動の渦につつまれる至高の名品!(源氏)」、「吉田のうどんの原点を思い知らされる刮目の一杯!(桜井うどん)」といった具合。高校生らしい惜しみない賛辞が並ぶところもなんとも味わい深いと私は思う。
毎年、うどん店を紹介するフォーマットは同じだが、さまざまな企画に挑戦している切り口も、編集者・ライターと名乗っている私がちょっと嫉妬してしまうような読み応え。パソコンのデザインソフト「イラストレーター」を使った高校生たちのデザインのクオリティも高く、同じ店の紹介でも見せ方でこんなに違うのかと見ていて楽しい。なによりきっとデザインを楽しんでいるんだろうなと思う誌面。大久保先生に聞くと、冊子作りの経験を経て「将来の夢はデザイナー」になる生徒もよくいるそうだ。