
茨城県行方市
夏祭りで見かける金魚すくい。何度挑戦してもすぐに破ける紙製の網と空っぽのお椀に、「どうせ無理だろう」とさじ(網?)を投げたも多いはず。しかし諦めるのはまだ早い。茨城県行方市には金魚すくいを教える塾があるというのだ。夏に向けて金魚すくいの腕を上げるべく、いざ入塾!
最寄りのICから【E6】常磐自動車道「土浦北IC」を下車
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7月のある日の午後、私は500匹の金魚が入った水槽を見つめていた。
「令和生まれ」の小さな金魚たちは、私のことなど気にもせず水のなかを自由に泳ぎ回っている。赤や黒のまばらな色の金魚を見ているうちに「金魚は生まれたときは黒色。太陽の光を浴びて赤くなる」という塾長の言葉を思い出した。蛍光灯の光だと、赤ではなくオレンジに近い色になるらしい。
だめだ、集中しないと。
もうかれこれ3時間、膝をついて金魚たちと「すくい、すくわれ」の攻防を繰り返している私は、徐々に自分の集中力が落ちてきていることに気づいていた。、水の中に入れ続けていた手はふやけ、「ポイ」と呼ばれる金魚をすくうための紙製の網を握る指先には痺れすら感じる。
最後に受ける検定試験で目指すのは、3分間で41匹すくうこと。仕事の合間に金魚すくいにやってくるという行方市長の7月の記録を越えることが、私の今日の最終目標だ。この3時間で頭に叩き込んだ金魚すくいの知識と、身体に覚えさせた動きを思い返す。すくってやるぞ、41匹……。
「準備はいい? いくよ」
塾長の大河正人さんが、音楽プレーヤーに手をかける。
「よーい、スタート!」
始まりの掛け声とともに、3分間の『行方音頭』が流れ始める。踊りだしたくなるような景気のいいリズムに惑わされないようにしながら、静かに水に手を入れた。