未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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『旅の思い出』編 会いたい人がいる旅 縁もゆかりもなかった山梨が、「私の田舎」になるまで。

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.166 |27 July 2020
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#7会いたい人がいるから、旅をする

「また、いつでもおいで」

飯嶋さんを始め、山梨の人たちは、最後にいつもそう言う。おいしいものが食べたくなったとき、心が疲れて何も考えたくなくなったとき、誰かに会いたくなったとき、いつでも帰ってきていいんだよ、と。

そういえばライターになってから「またおいで」は、よく言われる言葉のひとつになった。

未知の細道で取材した、栃木県益子の機織り職人さんや、茨城で金魚すくいを教えてくれた塾長や、栃木でほうきを作る職人さん。たくさんの人たちに「また遊びにきてね」と言ってもらい、名残惜しさをこらえて帰ってきた。そのたび、なんの縁もゆかりもなかった場所が、その人たちに会うために「帰りたい場所」になる。

勢いで飯嶋さんを訪ねてから、また会いたい、と思う人がいっぱいできたから、私は山梨を「自分の田舎」だと思えるくらい好きになったんだと思う。

「疲れたら、山梨に寝転がりにおいで」と言われて、本当に寝転がりに行ったこともある

この自粛期間中、娘が2歳を迎えた。ある日、飯嶋さんから届いた箱に入っていたのは、木製のカメラのおもちゃ。

「お誕生日おめでとう。つぐら市で見つけたカメラのおもちゃです。親子で一緒に取材ごっこしてくださいね。本当は直接、渡したかったけど、落ち着いたらまた山梨きてね」

ああ、はやく会いに行って大きくなった娘の姿を見てもらいたいな。ぶどう畑が広がるマルシェで娘を遊ばせて、大きな空を見上げたい。そう思うとき、やっぱり山梨は「私の田舎」になったのだと思う。

※未知の細道では、新型コロナウイルスの影響が収まるまで、ライター陣の過去の旅をつづるエッセイを掲載いたします。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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