最初に向かったのは、「景色がいい」と聞いた岩堂山。いくぞー! と景気よく声をかけて進み始めて、間もなくハッとした。自分がいつも「ナビ」に頼っているということに。
車に乗っている時はカーナビ、自転車や徒歩の時はスマホのナビ。でも、トゥクトゥクにはナビがない。後ろに座るガールズのスマホでナビを頼めばいい、と思う読者もいるだろうけど、それは難しい。窓がないから、ドルルルーッという走行音がそのまま耳に届く。普段はなかなか味わうことのないその「走ってる感」がまた楽しいんだけど、後ろの席から話しかけられてもよく聞こえないのだ。
頼れるのは、紙のマップと記憶力。だけど、僕の記憶力はもともと頼りない。信号待ちの時にパッと確認したのに、その数分後、住宅街に入り込み、あれ、と思って停車してマップを見たら、曲がる方向が逆だった。
察しのいいガールズたちは、その1回で理解してくれんだろう。その後は、トゥクトゥクの進行方向が怪しいと感じたらすぐにスマホのマップを確認し、後方から大きな声で「イオさん、この道違うみたい!」と教えてくれるようになった。そういう時はだいたいリアルに間違えているから、トゥクトゥクを止めて正しい道を確認し、Uターンする。
想像してほしい。それが普通の車で、短気な人なら「またかよ!」と怒りたくなる人もいるだろう。ガールズはみんな僕の凡ミスを笑って許してくれていたけど、帰り際、アオキさんが呟いた一言で納得した。
「トゥクトゥクだと、道を間違えてもぜんぜんイラっとこないんだよ。むしろ、Uターンとかで小回りの利く感じが新鮮で面白い!」
なるほど! オープンエアなトゥクトゥクはきっと、乗っている人の心も軽くしてくれるのだ。ガールズはもともとみんなおおらかだけど、それにしてもおっちょこちょいに優しい乗り物だということが判明した。
岩堂山につくと、特産の三浦大根など秋冬物の野菜たちが元気に育っていて、眼下にはグリーンがいっぱい。少し曇っていたけど、畑の緑の先の海まで一望できる景色は確かに深呼吸したくなる気持ち良さだった。