未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
210

脱サラしてヤギを飼い、チーズを作る。 東京生まれのシェーブルチーズはいかが?

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.210|25 May 2022
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#3テレビで見つけた理想の生き方

会社員として働きながら、これからどう生きようかを模索していた社会人1年目、堀さんは農業に可能性を感じるようになっていた。個性がある高品質の作物を育て、「堀さんだから買う」というファンを作ることができれば、会社や人間関係に縛られずに生きることができる。

農業をするなら米か、トマトか、シイタケか……と考えていたある日、たまたまテレビで岡山県の吉備高原で放牧酪農とチーズづくりを行う吉田牧場を取り上げた番組を観て、心を鷲づかみにされた。自分の土地で牛を育て、その牛乳でチーズを作るということは、原料から食品になるまで一貫して手掛けるため付加価値をつけやすくなる。そのうえ、食品を作るという面白みも加わる。

「これだ!」

吉田牧場に理想の生活を見て、酪農家兼チーズ職人になろうと心に決めた堀さんだが、きっちり3年間、会社員を続け、その間に結婚もした。

理系出身の堀さんは、夢に浮かれて無謀なチャレンジをするタイプではない。「自分の力で生きる」ためにどうすればいいのか、理詰めで考え、それを実現するために現実的な判断をする。会社員を続けたのも、「3年経ってもやりたかったらやろう」と考えてのことだった。

3年経っても酪農家兼チーズ職人になろうという想いが冷めることはなく、堀さんは2016年4月、北海道の上川郡新得町に渡る。多くの研修生を受け入れてきた実績のある共働学舎新得農場で、チーズ作りを学ぶためだ。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
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