未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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織田信長も食した富山湾のキトキトな魚を求めて 深夜2時半、定置網漁船の旅へ

文= きえフェルナンデス
写真= きえフェルナンデス
未知の細道 No.293 |25 November 2025
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#3「天然のいけす」と呼ばれる海

午前3時。ブゴゴゴオオオ……とエンジンが唸り、船は富山湾へと滑り出す。

富山湾は、能登半島に囲まれた内海で、日本3大深湾のひとつとして知られている。岸近くから急激に深くなる独特の地形により、表層には暖かい対馬海流が、深層には冷たい海洋深層水が流れ込む。この温冷の環境と、日本アルプスから流れ込む森の栄養によって、多種多様な魚が生息しやすくなり、別名「天然のいけす」とも呼ばれている。こうした好条件により、漁業が盛んな地域となった。

定置網漁業は、日本の沿岸漁業漁獲量の約4割を占める重要な漁業のひとつだ。七尾市役所の記録によると、定置網漁業は戦国時代の末期からすでに始まっていたと伝えられている。

記録されているのは、戦国時代の1579年。あの織田信長に富山湾で獲れた出生魚のブリを献上した記録が残されている。そのため、富山湾は定置網漁業の発祥の地としても名高い。

10分ほど進むとエンジン音が次第にゆっくりになっていく。どうやら到着したようだ。

グオオンオンオンオンーー網を巻き上げる機械が稼働する。船員たちは慣れた手つきで無言のまま、網を下ろしていく。

網を引き上げるローラーはゴム製で、空気圧によって人の手のようにやさしく網を巻き上げる。そのため、網に傷がつきにくいという特徴がある。約20分ほどの無言の網引き。時折カモメが様子を見にやってくる。

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