
東の空がかすかに色づきはじめ、刻一刻と港に輝きが増していく。平行するように、刻一刻と私のまぶたが重くなっているのを感じた。睡魔との戦いが始まった。立ったまま意識が遠のきそうになり、慌てて目を開ける。
仕分けが終わり、朝食の時間と思いきや、皆が帰り支度を始めた。あ、あれ……。
「あのー、すみません。……朝食は?」 「朝食は2名以上から受付可能なので、今日はないですよ」
頭が真っ白になる。お腹がぐーっとなる。私の完全なる確認不足だった。自分の至らなさに悔しさがこみ上げる。追い打ちをかけるように横から経理の方がいう。
「ここに置いてた"かぶす"、間違えて市場に持って行かれてしまったよ」
"かぶす"とは富山湾周辺で使われる漁師言葉で、「分け前」を意味する。ここでは、漁を体験した参加者に渡される魚のことを指す。
落胆する私を見かねたのか、酒井社長は特別に魚市場の競りを見学させてくれた。帰りの車中では、「お腹すいたでしょ」と手作りのクッキーまでいただいた。甘さ控えめだけど優しい味は、漁師たちの人柄を表しているようだった。