未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
305

生ける文化財を守る 〜江戸時代に菅江真澄が伝えたシロバナタンポポのゆくえ〜

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子(表記のないもの全て)
未知の細道 No.305 |25 May 2026
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#7「生ける文化財」を再考する

板柳町のCMを作ったモーガンさんと清美さん

プロジェクトが発足して5年が立つ。その間に、清美さんはアメリカ人のモーガンさんと出会った。モーガンさんは清美さんのプロジェクトを映像クリエイターとしても支えている。昨年は板柳町のCMを一緒に作り、コンセプトや映像撮影をモーガンさんも手伝った。本家の庭に咲くシロバナタンポポのモノクロの映像から始まり、やがてカラーになっていくCMは、江戸時代から伝わるシロバナタンポポの歴史を想起させる。モーガンさんのアイディアだ。

「モーガン、青森にきて清美さんとシロバナタンポポに出会って、どんなことを感じますか?」と私は聞いてみた。モーガンさんは「素晴らしいと思います。自分たちのクリエイティブタレントも使えるし、プロジェクトマネジャーにもなれる。そして家族の歴史と生きがいが、ぜんぶある」と、英語混じりの日本語で答えてくれた。

隣で清美さんと千春さん親子は、「すごい! モーガンが今日一番いいことを言ってまとめてくれた!」と笑っている。

いまはフリーランスをやめ、会社員として働きながら、シロバナタンポポの保全活動を続けている清美さん。以前より時間の制約があり、清美さん一人の活動としてプロジェクトを続けていくのは、難しさもある。だが、シロバナタンポポの株はだいぶ増えてきた。次のステップとして、まちの教育の一環、つまり「生ける文化財」として、学校や公共施設などさまざまな場所で、さまざまな背景、世代の人たちによって植えられ、育てられ、この花が増えていくことを考えている。そのためには、シロバナタンポポの歴史や生態の周知活動が欠かせない。

そこで清美さんが新しく始めたのは『シロバナの再考』。このシロバナタンポポの歴史を知り、記録を収集・展示し、守り育てていく人たちのチームだ。さらにこのチームのインスタグラムのアカウントをつくり、情報を発信し始めた。

清美さんには夢がある。それは「菅江真澄の漫画」を書くこと。すでに小学校の観察日記やイベントの資料では、清美さんのイラストで、菅江真澄とシロバナタンポポのショートストーリーとして描かれてきた。しかし、まだまとまった漫画にはなっていない。そもそも菅江真澄も、まだまだ謎が多い歴史上の人物だ。清美さんは秋田にある「菅江真澄資料センター」にいくなどして、独自のリサーチも始めている。

「菅江真澄は現代だったら、有名な旅ブロガーになっているかもしれないですよね、きっと」清美さんの想像は広がる。

「いつかぜったいに菅江真澄の漫画を、私が書きたいんです」清美さんは繰り返した。先祖が出会い、友情を育んだ菅江真澄のストーリーを子孫が描く未来は、そう遠くないだろう、と私は思った。そして、その頃には、板柳の町のいたるところに、シロバナタンポポが増えているかもしれない。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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