最初に向かった直売所は、ふくちジャックドセンター。ここは、この日僕が宿泊する町営の宿泊施設アヴァンセふくちに併設されているから、チェックインしてすぐに向かった。宿には「22日は鍋の日!」とあちこちに書かれていたこともあり、この時は、今夜、鍋をする人もすぐに見つかるかも! と楽観的な気持ちになっていた。
施設では、近隣の農家のおかあさんがふたり働いていた。「今日、22日は鍋の日って知ってますか?」と質問をすると、「ここでは22日になると『今日は鍋の日です』と放送がかかるから、みんな知ってますよ!」と期待通りの答えが返ってくる。
さすが町営施設! 3年間も毎月放送で念を押されていれば、サブリミナル効果で、自然と「22日といえばナベ」となりそうだ!
で、おかあさんたち、今夜は鍋ですか?
「うちは違うねえ」
「うちは昨日、鍋だった」
……ホ、ホ、ホワイ、イエスタデー!? サブリミナル効果、ゼロ!
いやいや、まだ捜査は始まったばかり。おかあさんふたりに捜査の目的を話すと「あっら~、そのために東京から?」と笑われた。
ここからが、おかあさんたちの本領発揮。
なんと、店内で買い物をしているお客さん数人に「○○さん、今夜、鍋じゃない?」と声をかけてくれたのである。東京じゃあり得ない光景に、僕は思わず、最近あまり聞かなくなったフレーズの一部を変えて「南部町のおっかさんた~ちは、あったかいんだから~♪」と歌いだしたくなった。
しかし! である。その時お店にいた全員が、夕食は鍋じゃないと回答。にわかに雲行きが怪しくなってきた。
僕のひきつった笑顔に気づいたのか、店員のおかあさんふたりに「ちゃんと22日に食べてる人もいると思うよ!」と励まされ、「チェリーセンターに行くといいですよ!」とアドバイスをもらう。
「チェリーセンターはここよりも大きくて、留学生をお世話しているような人がよく買い物に行くところなの。だから、今夜の夕食が鍋の人もいると思います!」
これはこれは、グッドな情報をサンキューチェリーマッチ! 僕はお礼を言って、ふくちジャックドセンターから車で15分ほどの距離にあるチェリーセンターに向かった。

川内イオ