――そんなことを考えていると、中鉢さんが「イオさんも乗りますか?」と声をかけてくれた。ゾウに乗るのは、大学の卒業旅行でタイに行った時以来。懐かしい想いでかごに腰掛けていたら、中鉢さんが途中で「せっかくの体験なんだから、前にどうぞ!」と言う。
ワオ! マジっすか?!
ドキドキしながら、ドゥアンさんと入れ替わってブンミーの頭の上にまたがる。ついに気分だけでもゾウ使いになれた! と感慨もひとしお……になるはずだったけど、ブンミーが動き出したらバランスを取るのに必死でそれどころではなかった。かごに乗っている時もかなり揺れるんだけど、それとは比べ物にならないほど上下左右にグラングランする。もちろん、身体を固定するものは何もないから、落ちたらケガをするのは確実。
へっぴり腰になるとバランスを崩しやすくなるから、体を起こして内またに力を入れてバランスボールにまたがるように体幹で均衡を保つのがコツらしいんだけど、なかなかどうしてゾウの歩くリズムに合わせるのが難しい。「気持ちいい!」とか言って余裕ぶっていたけど、実はビビりまくって何度もブンミーの両耳をギュッと掴んでしまった。ごめんよ、ブンミー。
しかも、ゾウから降りる時はどうするのかと思ったら、少し頭を下げたブンミーから、ひょいと飛び降りてください、との指示。怖いです、手を貸してください~なんていうのは男が廃ると思い切って飛び降りたけど、地面に足がついたら汗がドッと噴き出してきた。
リラックスして余裕でゾウに乗っているシンサイさん、ドゥアンさんの領域に達するまでにどれぐらいかかるのか、想像もつかない。でも、とにかくエキサイティングで興奮した僕は、中鉢さんに「最高でした!」と伝えると、「取材に来た方で、ゾウの頭の上に乗った人は初めてなんですよ」と言われて、ビックリポン。
その場のノリで「この人なら大丈夫だろう」と思ってくれたのだろうけど、万が一、何かあれば許可を出した中鉢さんが怒られるに違いない。さすが副支配人という管理職でありながらバンドマンのスタイルを崩さないだけあって、チャレンジャーなのだ。

川内イオ