山田町は人口1万6000人ほどの小さな町だが、これまでに前田花(1964年9月十両昇進)という関取を生み出し、そのほかに幕下どまりで終わった力士も数人いるという。ひとつの町から複数の力士が誕生しているのだから、沿岸部の踏ん張りは相当なものだ。
この相撲熱は近年まで続き、ある新聞記事には「1973年に学童相撲が始まると、町内外から100人以上が集まった」(東京新聞3/9版参照)と記されていた。
しかし時は流れて、最近では山田町の小学生から高校生までの年代で、相撲を取っているのは二人しかいなくなってしまった。そのうちの一人が、現在17歳になった佐々木拓海くん、もう一人はこの春、地元の中学に進学したばかりの千代川勇也くんだ。
もともとの少子高齢化、過疎化に加え、東日本大震災が起こり、さらに相撲を取りたい、力士になりたいという子どもが減っていることもあり、山田町の相撲の歴史はもはや風前の灯火に思えるが、そんなことはない。二人は立派に灯火を受け継いで奮闘している。

川内イオ