埼玉県東松山市
昨年7月、南米のチリから遠路はるばる日本にやってきた世界最小の鹿、プーズー。日本で初めてとなるプーズーの飼育と展示を担うのは、埼玉県こども動物自然公園だ。今年2月には赤ちゃんが生まれて、いまやすっかりプーズーは人気者!それにしてもなぜ、そんなに珍しい動物が埼玉に?
最寄りのICから関越自動車道「東松山IC」を下車
最寄りのICから関越自動車道「東松山IC」を下車
朝から降り続いていた雨がサッと上がり、太陽が顔を出して急に蒸し暑くなり始めた4月某日のお昼前。ふたりの子どもが、埼玉県こども動物自然公園のなかで、「お母さん、早く、早く!」と言いながら駆けていた。
お母さんと呼びかけられた女性は、「ちょっとちょっと、走らないで!」と注意しながらも、その顔はしっかりと笑っている。女性の「待ってよ~、どこ行くの~!?」という呼びかけに、前を走る子どもたちは振り向きながら大きな声でこう叫んだ。
「鹿!」
動物園にきて、子どもたちが「鹿」を目指して走る姿はめったに見られない。日本全国の動物園でほぼ確実に飼育されているけど、決して主役にはならないのが鹿ではないか。
いや、動物が大好きな2歳の娘を連れて2、3カ月に一度は動物園に行っている僕の主観では、主役どころか、脇役のなかでも「通行人A」ぐらいの存在感しかない。うちの娘は、鹿の前を通ってもほぼシカトしている。
ところが、埼玉県こども動物自然公園ではいま、鹿ブームが到来。大人から子どもまで、来園者のほとんどが鹿の飼育スペースに足を運ぶ。鹿と言ってもただの鹿ではない。来園者は、昨年7月、地球の反対側の南米チリからはるばる埼玉にやってきた世界最小のシカ「プーズー」を目指しているのだ。
プーズーを国内で飼育・展示しているのは埼玉県こども動物自然公園だけ。プーズーというかわいらしい響きの名前を持つ、世界最小、ここでシカ見られない鹿ともなれば、人気沸騰も頷ける。
それにしても、そんな珍しい動物がなぜ埼玉に? と疑問に思う方もいるだろう。その裏には、同園の知られざる取り組みと飼育員の奮闘がある。
川内イオ