総敷地面積46ヘクタール(東京ドーム約10個分!)もある広大な同園には、約200種類の動物が展示されている。そのなかでも屈指の人気を誇るのが、33羽のフンボルトペンギンがいる「ペンギンヒルズ」だ。
え? ペンギン? と侮ってはいけない。初めてペンギンヒルズを目にした人は、目を疑うこと請け合いだ。ペンギンは氷の世界に棲んでいる。それが僕を含めてほとんどの日本人に植え付けられたイメージだろう。
でも、ヒルズ族のペンギンたちは違う。緑豊かな小高い丘の上に巣を構えていて、毎日、波の出るガラス張りのプールに通ってエサを食べたり、プカプカくつろいだり、泳いだりした後、丘の上の自宅に帰るという生活を送っている。
まるで六本木ヒルズに住んで、毎日ジムのプールに通っている意識の高い有閑マダムのような生活だけど、それは埼玉のヒルズ族が特別な存在だからというわけではない。これが、彼らの本来の姿なのだ。
「氷の世界に棲んでいるペンギンもいますが、それ以外のペンギンもたくさんいます。世界には森の中に住んでいるペンギンもいますからね。フンボルトペンギンも、彼らの実際の生息地を再現して作ったんですよ」
そう説明してくれたのは、ペンギンヒルズの飼育係長、小山良雄さん。小山さんは、ペンギンヒルズの計画ができた時に、実際に南米チリのチロエ島にあるフンボルトペンギンの保護区にまで足を運んだ経験を持つ。
現地でペンギンたちが器用に急な坂を上り、緑豊かな丘陵にある営巣地で暮らす姿を見た小山さんは驚嘆したそうだ。
「知識では知っていたけど、本当にこんなところに棲んでるんだ! と思いました」

川内イオ