未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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世界最小の鹿を“のぞき”に行きませんか?

埼玉にプーズーがやってきた!

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.90 |10 May 2017
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#3世界最大のペンギン施設が誕生

造波装置付きのガラス張りプールでくつろぐペンギンは老若男女問わず大人気

 埼玉県こども動物自然公園は、チロエ島の環境を模するために、園内の西側に3900㎡の土地を用意。高さ4メートルを超える草地の丘、造波装置付きのプールなどを用意し、2011年の4月、世界最大級のペンギン施設をオープンした。

 ところが、ペンギンヒルズに連れてこられたペンギンたちは、故郷をほうふつさせる環境に大喜び! とはならなかった。最初に同園に集められたペンギンたちは、みな室内の展示施設からやってきた。生活の場がコンクリートの上だったから、土の地面の感触にすら怯えて、彼らにとって慣れ親しんだプール周辺から動かない。そこで、小山さんは知恵を絞った。

「ペンギンは仲間がいると怖がらないので、人工で育てたペンギンを連れて丘の上に行って、その姿を見せたり、鳥の模型を置いてみたり、いろいろ試行錯誤しました。一番、効果があったのは写真です。フンボルトペンギンの等身大の写真をべたべた張って、あそこに仲間がいるなら大丈夫だろうという雰囲気を作ったら、次の日には写真につられて登ってくるようになりました」

 こうして、警戒するペンギンと警戒を解きたい小山さんたち飼育係のせめぎ合いは次第に落ち着いた。環境だけでなく、「人間は危険な存在ではない」ということも認識されたことで、来園者はペンギンたちが丘の巣からプールまでペタペタ、よちよちと歩いて移動する様子を間近に見ることができるようになり、同園の人気施設となったのである。

鳥インフルエンザ対策による展示・イベント変更が終了するとペンギンの餌やりなども体験できる

 僕が訪れた時は鳥インフルエンザの影響で残念ながらプールでくつろぐ姿しか眺めることができなかったけど、それでもガラス張りのプールで泳ぐペンギンを見て、子どもだけでなく、大人まで大喜びしていた。
 (ペンギンヒルズでの小山さんの奮闘は、『動物翻訳家』(片野ゆかさん著)という書籍で詳しく紹介されているので、もっと知りたいという方はぜひ書籍を手に取ってほしい)

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未知の細道 No.90

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。