未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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幻の落花生をピーナッツバターに!

NutsによるNutsのための物語

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.93 |25 June 2017
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#3馬車馬のように働いたインターン時代

肥沃な農地での無農薬栽培では、毎日が雑草との格闘

 こうして、ダンサー志望の若者はビジネススクールの学生になった。「大学に行こうなんて考えたこともなかった」が、勉強を始めてみると、思いのほかのめり込んだ。最初の2年間はVPレコードの本社で働きながら学校に通い、3年目からは「大学で勉強したことをもっと活かしたい」と、世界4大会計事務所のひとつ、KPMGでインターンを始めた。

 日本でインターンというとお客様扱いでお手伝い程度のイメージがあるけど、アメリカでは誰もお世話してくれない。自ら「何かお手伝いしますか」とアプローチして、必要があれば仕事が与えられる。もちろん、使えないインターンは即サヨウナラ。

 負けん気の強い杉山さんは、がむしゃらに働いた。フルタイムの社員と同じくらい仕事をして、24時間オープンしている大学の図書館で寝て、朝から大学の授業を受けた。このとき、日本人の強みに気づいた。

「なんでもやります精神だったから、仕事以外にもみんなのディナーを注文したりしていましたよ。チームとして働くから、こいつと一緒のチームで働きたいなって思われるのが一番でしょう。そういうとき、日本人のちょっとした気遣いって大事なんです」

 卒業したらKPMGで働きたいと思っていた杉山さんは、全力で周囲に気を配った。しかし同時に、思いっきり自己主張した。

「大きい会社なんで、基本的に全て与えられたものを使うんです。でも効率が悪い部分もあって、もっとこうすればいいんじゃないの? という話をよくしていました。自分でエクセルをプログラミングして、使いやすいようにシステムを変えたり。だから生意気なやつだなと思われていましたけど、それでみんながいい方向にいけばいいと思ってました」

 アメリカでは、ビジネスの現場で存在感なき者はそこにいないのと同じ、という。杉山さんは、よっぽど存在感があったのだろう。KPMGで2年間インターンした後、晴れてフルタイムの正社員として採用された。

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未知の細道 No.93

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。