未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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駿河竹千筋細工唯一の女性職人

竹ひごで描く曲線美に惹かれて

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.94 |10 July 2017
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#4一本一本丸ひごを作る

駿河竹千筋細工は照明のカバーとしてもよく用いられる

 駿河竹千筋細工の特徴は、仕事の9割をひとりで担うこと。篠宮さんの工房では竹を切り、煮詰めて油を抜くのは専門の業者に任せているが、届いた竹をノコギリで適当な大きさにカットするところから仕事が始まる。その後の作業は以下の順番で進む。

① 割り・へぎ:ナタで竹を細かく割く。

② 小割:2本の刃に竹を差し込み、先端を細かく裂く。裂け目を入れた竹を両手で捻るとさらに細かく分割される。

③ 先付け:ひごの先を削り、直径1.8ミリから0.5ミリまでの丸穴に通してペンチで引っ張ると一定の太さの丸ひごができる。

④ 約200度に熱した電気ゴテに丸ひごを当てて曲げる。

⑤ 土台となる「輪っぱ」は、筒形のコテ(胴乱)を熱して、竹を巻きつけて丸める。

⑥ 輪っぱの両端を斜めに切り、円形にして継ぎ目がわからないように接着する。接着面がわからないようにつなげるのが腕の見せ所。

⑦ 輪っぱに穴を開け、ひごを差し込む。

 いくつかの工程を見せてもらったが、とても地味かつ時間のかかる作業で、こうやって丸ひごを一本一本作るのかと思うと気が遠くなったが、「私は何時間でも集中して作業ができるし、そういう仕事が好き」という神谷さんは、「今まで知らなかったことを学べるのはすごく面白かった」と振り返る。

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未知の細道 No.94

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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