未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
114

知られざる「伊豆のお遍路」を訪ねて

快適爽快スイスイ巡礼

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.114 |25 May 2018
この記事をはじめから読む

#5四国のお遍路へ

遠藤さんは、2ヶ月かけて四国のお遍路1300キロを歩いた。

 IT企業の経営者、投資家という顔を持つ遠藤さんが伊豆のお遍路に興味を持ったのは、四国のお遍路を体験してからだった。

「実は僕、メンサ(全人口の内上位2%のIQの持ち主で構成される国際グループ)の会員なんですけどね。苦労ばかりの人生だったんですよ。学校の勉強に興味が持てなくて高卒、19歳で結婚して子供もいました。他人とコミュニケーションを取るのも苦手で、20代には7回、会社を変えてるんです。社会不適合者ですよね(笑)。それで仕方なく起業したところ、ひとりでできる株の投資で上手くいったんだけど、人恋しくなって別の事業をしたくなった。でも、自分の人生を振り返ると不安が残る。それでふと思い立って、四国のお遍路に行ったんです」

 遠藤さんはひとり、1300キロの道のりを2ヶ月かけて歩ききった。その2カ月間で、ある気づきを得た。

「お遍路を歩いていると、お接待さんという人たちがいて、お茶を出したり、ミカンをくれたりするんです。その人たちは、お遍路さんを支える縁の下の力持ち。お接待さんと交流することで人間の温かみを感じることができたし、自分はひとりで生きてるんじゃないと思うこともできました」

「88カ所を巡り終えることを結願というのですが、四国のお遍路を歩いて結願を目指す人は年間に1000人もいません。15万人のうち、大半は観光客です。だから、1650億円の経済効果がある。結果的に、寺社は信仰の入り口として観光客を受け入れることでインフラを維持し、毎年やってくる真剣に取り組む1000人を支えているのです」

このエントリーをはてなブックマークに追加


未知の細道 No.114

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。