IT企業の経営者、投資家という顔を持つ遠藤さんが伊豆のお遍路に興味を持ったのは、四国のお遍路を体験してからだった。
「実は僕、メンサ(全人口の内上位2%のIQの持ち主で構成される国際グループ)の会員なんですけどね。苦労ばかりの人生だったんですよ。学校の勉強に興味が持てなくて高卒、19歳で結婚して子供もいました。他人とコミュニケーションを取るのも苦手で、20代には7回、会社を変えてるんです。社会不適合者ですよね(笑)。それで仕方なく起業したところ、ひとりでできる株の投資で上手くいったんだけど、人恋しくなって別の事業をしたくなった。でも、自分の人生を振り返ると不安が残る。それでふと思い立って、四国のお遍路に行ったんです」
遠藤さんはひとり、1300キロの道のりを2ヶ月かけて歩ききった。その2カ月間で、ある気づきを得た。
「お遍路を歩いていると、お接待さんという人たちがいて、お茶を出したり、ミカンをくれたりするんです。その人たちは、お遍路さんを支える縁の下の力持ち。お接待さんと交流することで人間の温かみを感じることができたし、自分はひとりで生きてるんじゃないと思うこともできました」
「88カ所を巡り終えることを結願というのですが、四国のお遍路を歩いて結願を目指す人は年間に1000人もいません。15万人のうち、大半は観光客です。だから、1650億円の経済効果がある。結果的に、寺社は信仰の入り口として観光客を受け入れることでインフラを維持し、毎年やってくる真剣に取り組む1000人を支えているのです」

川内イオ