伊豆に戻り、「伊豆霊場振興会」の3代目会長に四国のお遍路に行ってきたと報告すると、それからしばらくして「4代目をやってくれないか」とオファーを受けた。恐らく、経営的な視点を持ち、なおかつ四国のお遍路を経験している人材などほかにいないからだろう。こうして2016年7月、4代目の会長に就いた遠藤さんは、寺社への挨拶もかね、22日かけて伊豆のお遍路400キロを歩いた。その旅路で、驚くことがあったという。
「四国特有のものかと思ったんですが、伊豆にもお接待さんの文化があったんです。僕は四国のお遍路と同じ格好で歩いていたんですが、そうすると畑仕事をしている人や道行く人が話しかけてくる。それで伊豆のお遍路の話をすると、お茶でも飲んでいきなさいと。これは日本人共通のおもてなしの文化なのかもしれませんが、感動しました」
歩いている途中で、伊豆のお遍路のポテンシャルも感じたそうだ。伊豆には質の高い旅館が多く、温泉もたくさんある。海と山が同時に楽しめて、風光明媚。これはいける! と手ごたえを得た遠藤さんは、伊豆のお遍路の復興に立ち上がり、様々な取り組みを始めた。
そのなかで力を入れていることのひとつが、レンタサイクルによるお遍路なのだ。伊豆は山がちで抜け道が少ないため渋滞が起きやすいし、起伏が激しいから歩いて巡るのも楽ではない。自転車、特に電動自転車なら渋滞も、起伏も気にせず、老若男女が伊豆の風を感じながら、お遍路を巡ることができる!

川内イオ