しばらくして郁美さんが亡くなり、跡を継いだ勝美さんは「ナンバーワンにして、オンリーワン」の日本茶を目指した。最もこだわったのが「生葉」だ。最高の生葉を作るために、あらゆる工程で徹底的にこだわった。
「叔父はお茶の出来の8割は生葉で決まると言っていました。そのために、肥培管理、病害虫の防除を徹底していました。良い葉を作るためには地力が大切なので、肥料はタネ粕、米糠、魚粕、骨粉などを配合した有機肥料を使います。土壌の微生物に影響するので化学肥料は必要以上に使いません。肥料切れしないように、肥料を施す回数も多いです。気候や天候に応じて変わりますが、普通の畑で2回肥料をあげる間にうちはさらに2回ほど多くあげています」
養分豊かな土地に根を張る茶樹は、冬の寒さや霜にも耐え、たくましく育つ。そうして春を迎え、青々と葉を茂らせた5月頃に茶摘みの時期を迎える。現代の茶摘みは機械化されているところも多いが、東頭は手摘み。しかも、枝の一本一本、葉の一枚、一枚を目視で確認しながらの作業になる。
「一般的なお茶づくりでは、機械で葉を一気に刈り取ります。手摘みのところも、普通はひとつの木から大きな葉も小さな葉も一緒に摘んでしまう。量目のことだけを考えればそうするほうが良いのですが、うちは生葉の良さを最大限引き出すために、貧弱な葉はそのままにして力強く伸びた葉っぱだけを摘みます。それだけ厳選しているんです」

川内イオ