未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「日本一」の称号を受け継ぐ茶師の挑戦

究極の茶葉と秘伝の園

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.115 |10 JUNE 2018
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#5徹底して「質」を追及

「ナンバーワンにして、オンリーワン」を目指した小杉さんの叔父の築地勝美さん。

 しばらくして郁美さんが亡くなり、跡を継いだ勝美さんは「ナンバーワンにして、オンリーワン」の日本茶を目指した。最もこだわったのが「生葉」だ。最高の生葉を作るために、あらゆる工程で徹底的にこだわった。

「叔父はお茶の出来の8割は生葉で決まると言っていました。そのために、肥培管理、病害虫の防除を徹底していました。良い葉を作るためには地力が大切なので、肥料はタネ粕、米糠、魚粕、骨粉などを配合した有機肥料を使います。土壌の微生物に影響するので化学肥料は必要以上に使いません。肥料切れしないように、肥料を施す回数も多いです。気候や天候に応じて変わりますが、普通の畑で2回肥料をあげる間にうちはさらに2回ほど多くあげています」

 養分豊かな土地に根を張る茶樹は、冬の寒さや霜にも耐え、たくましく育つ。そうして春を迎え、青々と葉を茂らせた5月頃に茶摘みの時期を迎える。現代の茶摘みは機械化されているところも多いが、東頭は手摘み。しかも、枝の一本一本、葉の一枚、一枚を目視で確認しながらの作業になる。

「一般的なお茶づくりでは、機械で葉を一気に刈り取ります。手摘みのところも、普通はひとつの木から大きな葉も小さな葉も一緒に摘んでしまう。量目のことだけを考えればそうするほうが良いのですが、うちは生葉の良さを最大限引き出すために、貧弱な葉はそのままにして力強く伸びた葉っぱだけを摘みます。それだけ厳選しているんです」

茶樹の枝一本、葉一枚を確認しながら茶葉を摘む。
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未知の細道 No.115

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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