未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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「日本一」の称号を受け継ぐ茶師の挑戦

究極の茶葉と秘伝の園

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.115 |25 April 2018
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#7すべては最高の茶葉のために

モノラックに載せて収穫した茶葉を下界に運ぶ。

 丁寧に手摘みされた茶葉は、その日のうちにモノラックで山から降ろされ、近くの工場に持ち込まれる。ここでも、いわゆる「常識」とは違う作業が行われている。

 日本茶は、収穫してからすぐに生葉を蒸す。葉に含まれる酸化酵素を失活化させるためだ。これをしないと、葉の発酵が進んでしまう。葉に少しでも酸化酵素が残っていて発酵してしまうと日本茶としては使い物にならなくなるので、普通は十分に時間をかけて蒸す。

 ところが、築地さんは日本茶業界の常識とはかけ離れた方法を独自に編み出した。

「うちの工場では、生葉に余分な蒸気をかけることで葉の成分が抜け、香りが飛んでしまうと考えています。だから、必要最低限、なるべく短時間で蒸して香りや味を閉じ込める製法をとっています。叔父は生葉が蒸され出てくるまで12~13秒程と言っていましたが、生葉の様子を見ながらやるので多少の前後はありますね。ほかの生産者からしたら、そんなに短くて大丈夫なの? と思われるかもしれませんが、酸化酵素を失活化させてしまえば、それ以上蒸す必要はないので、いつもギリギリのタイミングを見計らっているのです。これは最も繊細な作業で、ほかの工場では真似できないことだと思います」

「ナンバーワンにして、オンリーワン」を目指した築地さんの取り組みを聞いて、「すべては最高の茶葉のために」という言葉が浮かんだ。実は、東頭の茶樹の種類は前述した「やぶきた」。日本の75%を占める「やぶきた」でありながら、常識を覆すチャレンジの末に、100グラム1万円の日本茶「東頭」が生まれたのだ。実は勝美さんは東頭以外にもお茶を作っていて、そのどれもが国内外で高い評価を受けてきた。そうしていつしか「日本一の茶師」と呼ばれるようになった。

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未知の細道 No.115

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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