未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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日曜の朝、コーヒーと対話と哲学と。

カフェから始まる思索の旅

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.126 |26 November 2018
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#7クルミドコーヒーの挑戦

穏やかな語り口が印象的だった店主の影山知明さん。11月26日に書籍『続・ゆっくり、いそげ』が発売に。

 「ある参加者は、魂の受容の場だと言ってくれました」と話すのは、クルミドコーヒーのオーナー、影山知明さん。2012年に朝モヤをスタートさせて、6年半、続けてきた。

 「社会のなかでは、自分に100%忠実ではいられないことって誰しもありますよね。朝モヤはそれを表現できる場であるのかもしれません。自分に対して忠実な発言をすることを受け止めてもらえる場、自分は自分でいいと思える気持ち。おしゃべりが楽しいということよりも、自分を受け止めてもらうことで自分で自分を受け止められる場という要素が強いなと思っています」

 なぜ、朝モヤを始めたのか。そこには影山さんの人生の歩みも関係してくるから、振り返ろう。東大法学部を出て、外資系コンサルティングファーム、マッキンゼーに就職。絵に描いたようなエリート街道だが、現場の声よりも売り上げや利益の拡大をひたすら追求する資本主義の「ゲーム」に馴染めずに3年で退職。先輩とともに「ビジネスモデルや仕組みに投資をするのではなく、人の意志に投資する」ベンチャーキャピタルを立ち上げた。

 そこで「応援したい」と思う起業家に投資を続けながらも、「サポートするだけじゃなく、いつかは自分もプレイヤーになりたい」という思いが募り、独立。西国分寺にあった母方の実家を集合住宅に建て替えるというタイミングで1階にクルミドコーヒーをつくり、店主となった。2008年のことである。

 クルミドコーヒーは、いわゆるチェーン店とは真逆の発想で運営されている。スピードや価格で勝負するのではなく、あらゆる食材にこだわり、仕事に手間と時間をかけ、その価値を提供しているのだ。資本主義社会のルールでは非効率、非生産的と指摘されかねないが、このビジネスモデルは「きれいごとでも気持ちを込めてまっとうに仕事をすれば経済的にも成り立つはず」という影山さんの仮説に基づいている。

長野県の東御市から仕入れている国産クルミ。お客さんに無料で提供している。

 西国分寺の駅前にチェーン店がいくつもあるなかで、1杯のコーヒーが600円を超えるカフェの挑戦。最初の数年は赤字が続いたが、それでも毎年お客さんの数が増え続け、5年で黒字化。その後も右肩上がりの成長を続け、今では1日に120人ものお客さんが訪れる人気店になった。

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未知の細道 No.126

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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