未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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日曜の朝、コーヒーと対話と哲学と。

カフェから始まる思索の旅

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.126 |26 November 2018
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#8朝モヤの価値

クルミドコーヒーでは書籍の出版も行っていて、店内で購入可能。

 その途中、まだ赤字が続いていた2011年にパリのカフェを巡る社員旅行を実施し、現地で開催されている哲学カフェを見学したことが、朝モヤのスタートにつながった。

 「もともと、なんで日本人はもっとフランクに、リラックスした状態でまじめな話をする機会がないんだろうと思っていたんです。政治のことでもお金のことでも家庭のことでも、気軽に話せる場が身近にあればいいと思っていたんですよね。哲学カフェをやることがその解決策になると思っていたわけではないんですが、パリで見て面白かったし、僕らにできることだから試しにやってみようか、ということで翌年に始めました」

 始めた当初はそれほど人も集まらず、参加者が1人のこともあったという。それでも続けられたのは、手ごたえがあったからだ。

 「初期の段階から、朝モヤで出会った人同士が何かを始めるということがけっこうあったんですね。それは自己開示をして、それぞれの主体性が立ち上がってくる朝モヤだからこそ起こる縁であり、出会いだと感じていたので、その価値は感じていたんです」

 最初は影山さんとふたりのスタッフが持ち回りで進行役を務めていたが、ふたりともが店を離れて影山さんひとりになったことがあった。その時はさすがに「続けるのは大変だな」と思ったそうだが、常連のなかから「手伝いますよ」という人が現れた。その輪が広がり、今では進行役が5人となった。参加者にとっても、朝モヤの「価値」は大きかったのだろう。

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未知の細道 No.126

川内イオ

1979年生まれ、千葉県出身。広告代理店勤務を経て2003年よりフリーライターに。
スポーツノンフィクション誌の企画で2006年1月より5ヵ月間、豪州、中南米、欧州の9カ国を周り、世界のサッカーシーンをレポート。
ドイツW杯取材を経て、2006年9月にバルセロナに移住した。移住後はスペインサッカーを中心に取材し各種媒体に寄稿。
2010年夏に完全帰国し、デジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部を経て、現在フリーランスのエディター&ライターとして、スポーツ、旅、ビジネスの分野で幅広く活動中。
著書に『サッカー馬鹿、海を渡る~リーガエスパニョーラで働く日本人』(水曜社)。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。