その途中、まだ赤字が続いていた2011年にパリのカフェを巡る社員旅行を実施し、現地で開催されている哲学カフェを見学したことが、朝モヤのスタートにつながった。
「もともと、なんで日本人はもっとフランクに、リラックスした状態でまじめな話をする機会がないんだろうと思っていたんです。政治のことでもお金のことでも家庭のことでも、気軽に話せる場が身近にあればいいと思っていたんですよね。哲学カフェをやることがその解決策になると思っていたわけではないんですが、パリで見て面白かったし、僕らにできることだから試しにやってみようか、ということで翌年に始めました」
始めた当初はそれほど人も集まらず、参加者が1人のこともあったという。それでも続けられたのは、手ごたえがあったからだ。
「初期の段階から、朝モヤで出会った人同士が何かを始めるということがけっこうあったんですね。それは自己開示をして、それぞれの主体性が立ち上がってくる朝モヤだからこそ起こる縁であり、出会いだと感じていたので、その価値は感じていたんです」
最初は影山さんとふたりのスタッフが持ち回りで進行役を務めていたが、ふたりともが店を離れて影山さんひとりになったことがあった。その時はさすがに「続けるのは大変だな」と思ったそうだが、常連のなかから「手伝いますよ」という人が現れた。その輪が広がり、今では進行役が5人となった。参加者にとっても、朝モヤの「価値」は大きかったのだろう。

川内イオ