未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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ビールの里のコミュニティブルワリー・遠野醸造 出会いとアイデアがシュワッと弾けて、さあ乾杯!

文= 川内 イオ
写真= 川内 イオ
未知の細道 No.148 |25 October 2019
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#6予想を超えた化学反応

クラウドファンディングでの目標達成後も、袴田さんはたちの種蒔きは続いた。お店のペンキ塗り、醸造タンクの搬入など、ことごとくイベント化し、地元の人たちと一緒にお店を作りあげてきた。その象徴が、店内に置かれている椅子だ。ショップボットというサービスを利用し、誰でも簡単に組み立てられる椅子を作り、それをみんなで完成させた。

お店の椅子には、ワークショップに参加した人たちからのメッセージが記されている。

こうした取り組みによって、地元の人たちにとって親しみ深い場所に、市外、県外の人たちにとって気になる場所になっていたのだろう。昨年5月、無事にオープンを迎えると、当初の予想の2倍のお客さんが訪れた。

ここからが、「コミュニティブルワリー」実現に向けた本当のスタートライン。袴田さんたちは、自由な発想で企画を考えた。

例えば、自家焙煎しているコーヒー店とコラボレーションしてコーヒー風味のビールを作ったのを皮切りに、地元のハスカップや白樺の樹液を使ったビールも作った。

地元の漁師さんに牡蠣やタコを持ち寄ってもらい、それをお店で料理して、クラフトビールと楽しむ漁師ナイトも開催した。

岩手出身の女性エッセイストをゲストに、クラフトビールを飲みながら、エッセイと俳句についての語るトークイベントも開いた。

いかにも楽し気なこういったイベントから、自然発生的に新しいアイデアが生まれている。ある場所の湧き水を使ったビールを使ってほしいというリクエストが来たり。漁師ナイトに参加した生姜農家さんと「ジンジャーエールビール」を造ろうという話になったり。エッセイ&俳句イベントをきっかけに、遠野で俳句サークルが立ち上がって、ホップにちなんで「毬花句会」と名付けられたり。ここに挙げたどの話も、袴田さんたちにとっては予想外の出来事で、それこそが望んでいたことだった。

「ビールを通していろんなカルチャーとつながると、どんどん面白い人が集まってくるんですよね。それで、思わぬ化学反応が起きていて、その意外性がすごく面白い。具体的に何が起こるかわからないけど、想像もしてなかった面白い展開が待っているんじゃないかなって、ワクワクします。だから、この場所をどうしていきたいかと聞かれたら、僕らの予想がつかないような展開にしたいっていうのが答えです(笑)」

冒頭に記した、「ビールを通して地域と人やモノ、カルチャーをつなぐコミュニティブルワリー」。もしかすると、イメージが湧かなかった読者もいるかもしれないけど、ここまで読んでいただければわかったと思う。「遠野醸造TAPROOM」は、ビール以外にも遠野の町のいろいろなものを分解し、発酵しているのだ。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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