コーヒーを飲みつつ沼の方を眺めていると一部の鳥が飛び立ち始めた。「わぁ」と小さく歓声を挙げるが、「まだまだこんなもんじゃないよ」と声をかけられた。天気やさまざまなコンディションによって飛び立つタイミングはさまざまで、ピタッと日の出の時間に飛び立つわけではなく、全部のガンが一斉に、ということでもないらしい。
6時過ぎ。「あ、来たぞ」の声と共に、どどどどどーっと水面からおびただしい数のガンが飛び立った。その様子を見ていると、その迫力に体がぞわーっとした。こんなにたくさんの生き物に見下ろされる体験はそうそうないだろう。頭上をすごい数の生命が横切っていく。その気配に思わず息を止めた。周りの人たちも一瞬歓声をあげた後は、あっという間に飛び去っていく頭上のガンを一生懸命目で追ったり、素早くシャッターを押したり、緊迫感が漂っていた。
半ば呆然としながら再びバスに乗り込んでサンクチュアリセンターへ。静寂のなかで聞いた沼と鳥の鳴き声、水面を打ち鳴らしながら飛び立つ迫力……たしかにそれは視覚と聴覚の両方に深く刻み込まれる自然の壮大さだった。