未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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日本で越冬するガンの8割が飛来! ラムサール条約の湿地で、野鳥観察入門

文= 小野民
写真= 小野民
未知の細道 No.151 |10 December 2019
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#4渡り鳥の楽園のための条件

まだ飛び立たないガンの群れを前に、嶋田さんが参加者の質問に答えたり、望遠鏡をセットして、拡大して見るべきところを示してくれる。「どうしてここが渡り鳥にこんなに人気の場所なのでしょう」とこの地でこの光景が見られる理由を尋ねてみた。

「水鳥には凍らないねぐらが必要なんです。水場が凍ってしまったら、タヌキやキツネといった天敵に狙われてしまいます。だから、ここは凍らない水場だということがひとつのポイントです。あとは、やっぱりエサですね。伊豆沼・内沼で越冬するガンは、半径約12キロ内の農地で食料を調達しています。伊豆沼・内沼の周辺は大稲作地帯で、稲刈り後に落ちたモミが豊富にあります。以前調査をしたところ、手押しの稲刈り機より、今主流の大型のコンバインでの収穫は、落穂が多いんです。だいたい1町(約1ヘクタール)に1俵(60kg)の落穂があるんですよ」と嶋田さん。

オオハクチョウもたくさん見られるのだが、その理由は白鳥の好物であるレンコンが伊豆沼にはたくさんあるから。夏には多くの観光客で賑わう野生のハスの群生地でもあって、冬には沼のなかにたくさんのレンコンが残っている。

白鳥の話をしていると嶋田さんがこんな話をしてくれた。「白鳥が上空を飛ぶ時に人間の上を避けるのは、ロシアでは狩猟の対象だからだと思います。ここでも昔の地元の人は白鳥も食べたらしいんですが、肉はたくさん取れたけれど、あまりおいしくなかったようです。」

話を聞きながら、サンクチュアリセンターから持ってきた双眼鏡や望遠鏡で鳥を見ながら、ガンが飛び立つのを今か今かと待った。

「今日はお寝坊さんだな。待っている間にコーヒーでも飲まいん?」と宮城の方言で声をかけてくれたのは、サンクチュアリセンターの職員の方々。観察会があるときは、軽トラで現場へ行き、入れたてのおいしいコーヒーを振舞っているそうだ。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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