未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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暮らし、仕事、地域がとけあう 「100年続く服」から始まる“オガニック”なまちづくり

文= 小野民
写真= 小野民
未知の細道 No.160 |24 April 2020
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#4できたてほやほやの服を売る

ブランドにファンができていく過程で、縫製を担う人たちも手間ひまのかかる仕事の意味を実感するようになる。 洋服への反応がダイレクトに伝わるのは、デザイン、縫製、販売まで一貫して自らでやっているから。しかも、服をつくっているのは『縫人』のすぐ隣にある自宅の一角。徒歩5歩くらいの距離感で、つくる、売る、が完結しているのだ。

船木さん夫婦も店に立ちながら、自宅に行ったり来たり。店にいないときにお客さんが呼び出す用の呼び鈴がなんとも微笑ましい。

作業場所を覗かせてもらった。ミシンが並び、美しい布が壁いっぱいにあり、できた服が鴨居にかけられて揺れている。隣の部屋には、一家の生活。プロの手仕事と暮らしとがこんなに近くにある光景を初めて見た。「すごいなぁ」思わずつぶやいた。

「僕たちは服の産直って呼んでるんですよ」

一人さんはニカッと笑って言った。野菜の直売所は地方に定着しているけれど、服の直売所って考えたことがなかった。小さな革命の灯が灯されている気がした。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。