ブランドにファンができていく過程で、縫製を担う人たちも手間ひまのかかる仕事の意味を実感するようになる。 洋服への反応がダイレクトに伝わるのは、デザイン、縫製、販売まで一貫して自らでやっているから。しかも、服をつくっているのは『縫人』のすぐ隣にある自宅の一角。徒歩5歩くらいの距離感で、つくる、売る、が完結しているのだ。
船木さん夫婦も店に立ちながら、自宅に行ったり来たり。店にいないときにお客さんが呼び出す用の呼び鈴がなんとも微笑ましい。
作業場所を覗かせてもらった。ミシンが並び、美しい布が壁いっぱいにあり、できた服が鴨居にかけられて揺れている。隣の部屋には、一家の生活。プロの手仕事と暮らしとがこんなに近くにある光景を初めて見た。「すごいなぁ」思わずつぶやいた。
「僕たちは服の産直って呼んでるんですよ」
一人さんはニカッと笑って言った。野菜の直売所は地方に定着しているけれど、服の直売所って考えたことがなかった。小さな革命の灯が灯されている気がした。

