未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
167

『旅の思い出』編 過去から甦る建物と生き続けるアートをめぐる旅

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.167 |11 August 2020
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#6届け先のない手紙を預かります

最後に紹介するのは、《漂流郵便局》。瀬戸内海の小島にある現代美術作品だ。
空き家になっていた元郵便局をそのまままるごと利用した場所で、届け先のない手紙を預かってくれるというなんとも不思議な郵便局である。

漂流郵便局の存在は、たまたま新聞記事で知った。
届け先のない手紙とはどんなものだろう。どんな人がそこに手紙を送っているのだろう。気になってしまい、ある日高松から海上タクシーを掴まえ、粟島に向かった。
ほんの10分ほどで、島影がぐんぐんと近づいてきた。島はもう目の前だ。
桟橋に着くと、たくさんの人が「いらっしゃい!」と出迎えてくれたので驚いた。ちょうど瀬戸内国際芸術祭が開催中だったので、島の人たちが船がつくたびに歓迎してくれるようだ。
わあ、来てよかった、とその歓待ぶりにほっこりしながら、小雨のなかを歩いた。車も走っていない静かな集落で、懐かしい商店や木造の家並みを通り過ぎると、「漂流郵便局」は静かに佇んでいた。
外観は、まさに昭和の懐かしい郵便局そのものだった。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。