そもそも、私はなぜ「自力で小屋」を建てたい」なんて奇妙なことを思いついたのだろうか。その理由は、たぶん小学校時代の自分にある。
東京の中でも渋谷区という都会の都会で育った私は、子供の頃から体力がなく、体育もマラソンもアウトドアも虫も苦手だった。豊かな自然ともD.I.Yとも無縁なままに大人になり、不器用でちょっとした家具も作ることもできない。要するに、生きる力や知恵が圧倒的に弱いのだ。
ある日、ちょっとした虫にすら叫び声をあげる自分に嫌気がさした。
そして、誠に身勝手ながら、娘にはもっと自然を楽しみ、山道を歩き、家具くらい自力で作れるようになって欲しいと願うようになった。その結果、出てきた発想が自然豊かな場所に「小屋を作る」ということだった。
結局のところ、この小屋作りがナナオにどんな影響を与えているのかはわからない。ちなみにナナオも私に似てあまり体力がある方ではなさそうだ。なにしろ駅までの10分ほどの道のりでも「やだ、歩きたくない!」「疲れた! だっこして」「あとどれくらい歩くの?5分! むり!!」と連発する人だ。私が「公園にお散歩に行こうか」と誘うと、「歩くの、やだ」とクッションにしがみついてはなれない。そうナナオは、間違いなく歩くのが嫌いな人だった。


しかし、その一方で、自然の中にいることはとても好きらしい。その証拠に、いまも「玉虫、いないねえー」「わ、カタツムリがいるよ!」とキョロキョロし、大きなバッタを素手で捕まえている。
さて、今日はどれくらい歩けるだろうか。
なんとか3キロくらいは歩き切って欲しいと思った。