未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
172

『旅の思い出』編 雨の奥多摩も悪くない 5歳、はじめての山道をいく!

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.172 |26 October 2020
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#5駅から5分のアドベンチャー

  • つり橋をみてテンションがアップ。
  • マユミさんと娘のナナオは仲良しだ。

奥多摩の素晴らしいところは、駅を出て5分も歩かないうちに、深い渓谷地帯に突入することだ。川沿いのルートは平坦だが、周囲には岩がゴロゴロし、足元にはしぶきをあげる川が勢いよく流れる。時折現れる吊り橋も気分をもりあげてくれる。いきなりのアドベンチャーモードに、全員のテンションがぐんぐんと上がった。
「うわあ、景色が最高だね!」
 完全なる錯覚だが、まるでどこかの秘境を探検している気分だ。娘も臆することもなくずんずんと足を運んだ。

急な道ではマユミさんが優しくサポートして取ってくれる。

川岸に降りられるルートを発見し、私たちは足元を確かめながら河原に下りた。河原から見上げた渓谷はまた一層美しく、ひんやりと静謐な空気が頬をかすめていった。川は、あの日に見た通りにエメラルドグリーンをしていた。
時折、水の中では魚が跳ねた。本当ならばここで釣りができたのかもしれない。
「魚だよ、あそこ」
「ほんとだねー」
私たちはしばらく川を眺めていた。
さっきまでの雨のせいか、周辺を歩いている人はおらず、私たちは広い渓谷を独占していた。
この瞬間、ああ、来てよかった、と思った。
引き返す理由はたくさんあったけど、やっぱり来てよかった。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。