ネットやパンフレットに頼らず、「直感で良さそうな店でランチしよう」と決めて商店街を歩いていたら、ありました! 平日の昼間に行列ができている店「マルイチ」。ヒラガさんによると、基本的にいつも混んでいて、まだマルイチで食べたこともないというので、「せっかくだから」と並ぶことにした。


この待ち時間をヒマにさせないのが、マルイチのすごいところ。隣の隣にマルイチの鮮魚店があって、店先には近隣の海で獲れたばかりの色とりどりの魚が並んでいる。この魚は普通に売られているんだけど、ここで買った魚をすぐに調理して、自分たちの順番が来た後に食堂で出してくれるというシステムもある。
待ち時間を持て余す人の大半は、鮮魚店に引き寄せられる。すると、お店のお兄さん、お姉さんが、魚の説明をしてくれる。もちろん、どういう風に食べたらおいしいか、も。この甘いささやきが、脳みそではなく空腹の胃袋に直撃する。
僕らは、地元で「ダツ」と言われる深い紺色をした細長い魚と立派なアオリイカを選び、食堂で出してもらうことにした。合計5500円。ダツは刺身と煮込み、イカはお刺身に。もちろん、お店のお姉さんのおススメ通りだ。
そんなこんなで待つこと1時間、ようやく店に入った僕たちが迷うことなく注文したのはマグロの三点盛り。三崎魚港はまぐろの水揚げで全国有数の港で、「マグロの町」と呼ばれているのだ。張り紙メニューの「タコブツ」(タコのぶつ切り)と、それぞれご飯とみそ汁だけの「ご飯セット」も頼んだ。
これで十分だろう……と思っていたら、十分すぎた! 出てきたお皿をビックリ! すごい量! 大漁だ! しかも、マグロも、イカも、ダツも、タコもぜんぶ、口に含んだ瞬間に幸福感が湧き上がってくる。それはまるで三崎漁港に押し寄せる波のよう。4人ともしばらく黙々とはしと口を動かしていたら、ゴトウさんが言った。
「……これは黙って食べちゃうやつだね」
一同深く頷き、たいして会話もせず、ひたすら魚たちを味わい、堪能した。1時間後、大量の魚たちは姿を消し、がら空きだった胃袋は、水族館に早変わり。すっかり満腹になった僕らは、「もうなにも入らない」と笑い合いながら、「うらり」に戻った。