そろそろ、タイムアップ。トゥクトゥク隊は城ヶ島から西へ進路を取り、海沿いの道をひたすら走って三浦海岸駅に戻った。出発してから5時間はあっという間で、もっとトゥクトゥクで走り回りたい気分だったけど、そうもいかない。「三浦観光バス」では、根岸さんが待ってくれていた。
三浦出身で、祖父の代から「三浦観光バス」を家業に持つ根岸さんこそ、トゥクトゥク導入を決めた人だ。前職の旅行会社を辞めて三浦市に戻ってきた2014年、根岸さんは「(地元の)元気がないな」と感じたという。
根岸さんの祖父は最初に海の家を始めて、泊まるところが欲しいからと民宿をやり、そこから旅行会社、バス会社と手を広げてきた。しかし、今や三浦半島は神奈川県でも屈指のスピードで人口減少と高齢化が進んでおり、根岸さんが子どもの頃、約120軒あった海の家は、もう5軒しか残っていない。町内会や飲食店組合などの旅行もどんどん減り、町から活気が失われているのは明らかだった。
そこで、「なにか面白いことをできないかな」と考えていた根岸さんが最初に始めたのは、移動図書館。たまたま、葉山で移動図書館をしている人と知り合ったのがきっかけで、子どもたちのために毎月、移動図書館に来てもらうようにした。現在は新型コロナウイルスの影響で休止中だが、復活を待つ子供も多いだろう。
さらに「ずっと飲食をやってみたかった」そうで、昨年、地元の食材を使った料理を提供するキッチンカーも始めた。最近では、地元の高校から「コロナ禍で、文化祭の時に子どもたちが料理を作るのが難しい」という相談を受け、ただキッチンカーで出店するだけじゃなく、地元のミカンを使ったメニューを生徒たちと開発するところからスタート。それが縁で、今後も一緒に商品開発をしましょうという話になっているそうだ。