「地球が温暖化していくと、住みやすい土地は標高700メートル以上の場所になると言われているんです。だからあえて私は標高600メートルのこの場所でも循環を作って暮らしていくことに挑戦しています」
志の高さには一瞬面食らうほど高いが、その高みを目指す姿勢がどこまでも柔らかいのが寿香さんの生き方の肝なのだな、と私は1日を通して感じることになる。
自然に還るダンボールで草を抑制した凸凹の畑で育てられるハーブ、森に植えるための苗木、流れが滞った川を流す「ビーバー大作戦」……案内される敷地内のあちこちに自然を取り戻すための工夫がある。自然に戻していく、そのことを「rewilding」というのだと、この日初めて知った。
「再野生化」、「再自然化」と訳されるrewildingは、自然は最善の方法を知っているという哲学に則って行われるもの。でも、人間が手を加えて壊してしまった自然なのだから、自然化に手を貸すのはいい。寿香さんも実践するその手法の、ほどよい自然との距離感が心地いい。
camino natural Labo.では、rewildingについて現場の研究を深めながらも、訪れる人には手軽に森に触れる体験として、「香り」「食」のコンテンツと組み合わせて伝えていきたいという。