それからググっと時計の針が進み、2018年。今井さんは頭を悩ませていた。義父から、土地の活用について相談を受けていたのだ。
妻の祖父母が暮らしていた土地で、大宮駅西口から徒歩5分ほどの住宅街にあり、3階建てのアパートが建っていた。その土地が区画整理の対象になり、建物を建て替える必要があった。ところが、行政のスケジュールの遅延が続いたことで、その土地と建物は妻の祖父から妻の父(つまり今井さんの義父)に受け継がれ、義父も高齢になったことで、今井さんに話が回ってきたのだ。
「もともとは普通の賃貸マンションを建てる予定で話が進んでいたんです。でも、区画整理のスケジュールがさらに数年遅れるという連絡が来た時、義父から『新しくなにか建てても、自分たちには恐らくもう管理できないから、次の世代の人たちがなにかやったほうがいいんじゃないか? なにか考えてもらえませんかね』と言われました」
最初は、手っ取り早く駐車場にしようかと考えた。駅から近いため、手堅い収入が見込める。でも、すぐに考えが変わった。図書館に行って市史を読むと、国鉄大宮工場で働く労働者が集っていたエリアで、住民同士の交流も盛んだった。その町並みも様変わりし、周辺を見渡せばすでに開発が進んで、背の高いマンションが林立している。
古くから住んでいる人はいなくなり、新しく引っ越してきた人が多くなって、地域の関わりが薄くなってきた。それなら地域の人たちが集えるような場所を作ったらどうか? と考えるようになった。でも、それってなんだろう? グルグルと思考を巡らせながら息子と近所を歩いている時に、ふとある光景が思い浮かんだ。
「お父さんとお母さんがお店で働いていて、そこに子どもが学校から帰ってくるイメージです。それってすごくいいなって」
その想像は、自分でも予想しない方向に膨らんだ。
「子どもが帰ってくるのがお店じゃなくて映画館だったら楽しそうだな!」