その日、竹石さんから「日本各地のミニシアターが集まる全国コミュニティシネマ会議が川口であるから、一緒に行きませんか?」と誘われた。もちろん、断る理由はない。2019年9月6、7日に開催されたその会議に参加した今井さんは、映画業界の窮状を知る。
「例えば、映画がフィルムからデジタルに変わって、一台数百万円もする高価なプロジェクターが必要になりました。そのプロジェクターは複雑な機械なので、壊れたらほぼ修理できません。映画館は販売したチケット代の半額を配給会社に渡し、半額が収益になります。それだけで人件費や光熱費などの経費を賄わなければいけないのに、数年に一度、プロジェクターを買い替えるのは現実的じゃないですよね」
この会議ではほかにもさまざまな映画業界の課題が話題になっていて、「映画館を経営するのは大変だな」と感じた。それでも、映画館を作るのをやめようとは思わなかった。
「なかにはうまく経営しているところもあるんだから、いい方法があるに違いないと思いました。むしろ、新しく始めるのに従来のやり方に囚われる必要もないから、なにか新しい構造が作れないかなと思いましたね。ミニシアターだけで上映される作品って日本で公開される作品の四割にあたるんですよ。それがなくなるって文化的損失じゃないですか」
映画館だけが頑張るのではなく、配給会社も、映画関連の器材を扱うメーカーも一緒に解決策を探るべきだと考えた今井さんは、この会議の後、「新しい構造」のヒントを求めて、映画に関わる企業にメールを送った。
すると数社からリアクションがあり、それぞれの立場から見た業界の構造、課題、対策、これからどうなるかという予測を聞くことができた。気になることはとことん調べたいという今井さんにとって、映画というビジネスを俯瞰的に、包括的に見るいい機会になった。