映画館新設を巡る冒険は、偶然なのか、必然なのか、次々と助っ人が現れ、足りないピースが埋まっていった。今井さんを応援しようという輪は大きく広がり、クラウドファンディングでは、328人から535万7000円もの支援金が寄せられた。
迎えた2025年4月29日、ついにOttO開業。映画館を作ろうと思い立ってから、8年の月日が経っていた。
「僕が最初から計画していたら、多分こうはならなかったでしょう。なにか選択をした時点でほかの可能性を排除するわけですよね。僕はあまりそういうふうにならない方がいいと思っていて。わからないからこそ行ってみて、そこで見えるものがあり、こっちかなと進んでみる、その連続というか。なんとなく始めた設備の仕事も、ここに活きてますからね。たまに、OttOを作るためにこれまでの道のりがあったのかなと思うこともあります」
今井さんにとって想像もしない出会いや出来事の連続だった開業までの道のりだが、予想外のことは今も続いている。現在6割ほど埋まっているシェアハウスの住人に、映画好きがほとんどいないのだ。大半の人は駅や職場が近いという利便性を求めて入居していて、月に4回、無料で映画を観る権利をフルで利用している人はひとりもいないという。
課金すればスマホで映画もドラマもお笑いも見放題の現代、映画館で映画を観るという行為自体が馴染みのないものになってきているのかもしれない……と少し残念に思いながら今井さんの話を聞いていたら、偶然にも2025年9月に入居したという女性に話を聞くことができた。
――OttOを選んだ理由は?
「前から大宮に住みたいと思って、シェアハウスを探してたんです。すごくかわいかったんで、ここに決めました」
――映画館のある、なしはポイントにならなかった?
「ぜんぜん。それまで映画館には年に一回行くか行かないくらいだったので」
――年に1回! OttOでは映画を観ますか?
「はい! 入居した9月には4回、10月と11月も2、3回観ました。できれば毎月4回観たいなと思ってます」
――入居前とだいぶ変わりましたね。
「そうですね。2階の共有リビングと映画館がつながっているので、観たいと思ったらすぐに観られるから。それに、サブスクで観てると、途中で止めたりしちゃうじゃないですか。映画館だったら最初から最後までちゃんと集中して観られるのもいいですね」
――映画館が身近にある生活はいかがですか?
「なんかちょっと特別感があります。毎日が非日常って感じ!」
彼女の話を聞いて、「なるほど!」と思った。1年に一度、映画館に足を運ぶかどうかだった彼女が今では月に2、3本の映画を観るようになったのは、OttOが住人にも開かれていたから。OttOは、映画の面白さに出会うシェアハウスでもあるのだ。