義父の了解も取り付け、建築家の佐々木さんと3人で地元の金融機関を訪ねた2020年のある日。個室で向き合った担当者は、怒っていた。
「こういう話は困るんですよ!」
その2年前、シェアハウス運営会社と金融機関がグルになった大規模な詐欺事件が発覚し、数多くのシェアハウスオーナーが破産して社会問題となった。その担当者は、今井さん、佐々木さんが新手の詐欺師で、義父と金融機関を騙そうとしていると勘違いしたのだ。金融機関にとっては、それぐらい馴染みのないプランだったのかもしれない。
結局、この担当者との距離が縮まることはなく、別の金融機関と面談を重ねてなんとか融資の了解を取り付けた。ところが、そのままスムーズには進まない。
コロナ禍で物流が停滞したため、建築資材の在庫がひっ迫し、建築費用が高騰。そこで着工の数カ月前に融資の増額を依頼しにいったところ、逆に減額されてしまう。人の動きが著しく停滞しているコロナ禍に映画館を作ることがリスクと捉えられたのだろう。
これで、建築費用が数千万円も足りなくなった。「これはちょっともうダメかもしれない……」と諦めモードになった今井さんに、意外なところから助け舟が出る。
そのきっかけになったのが、「気になることはとことん調べる」という今井さんの気質だ。映画館を建てようとしていた土地のすぐ近くに、延々と工事をしている道路があった。幅25メートルのその広い道路が完成すると、住民は反対側に渡るためにわざわざ迂回しなくてはいけなくなる。それは不便だなと思った今井さんは、市役所に「あの道路ってどこにつながるんですか?」と聞きに行った。
すると、「大宮駅の西と東を結ぶ道路」という回答だった。しかし、工事をしているその先は地上も地下も電車の線路があり、どう見ても道路がつながるように見えない。そこで今井さんはさいたま市に行政情報開示請求を出したり、市長や市議会議員、自治会長に面会したりして、真相に近づいていく……。