しかしなぜ、多様な業種のなかで「ハンバーガーショップ」を選んだのだろう。
「飲食店にすることはすぐに決まったんです。入力作業のようにAIに取って代わられる可能性のある業務とは違い、人の手が求められるサービス業は残り続けますから。それに飲食店ではコミュニケーションや衛生管理の技術など、多くのことを学べます。一般就労に向けた環境として最適だと考えました」
問題は業種、つまりなにを売るかだ。平澤さんはまず、国会図書館に足を運んだ。外食産業の業種一覧を見て、30ジャンルほどリストアップし、そこから絞り込んでいったという。その際、大事にした要素は大きく3つあった。
1つ目は、市場が大きく安定していること。ハンバーガー市場は約1兆円規模で、外食産業のなかでも最大級。全国どこにでもあり、コロナ禍でも市場規模は落ちず、少しずつ上がり続けていた。
「福祉事業という性質上、安定性は絶対に必要です。流行り廃りがあるものは避け、国民食でいこうと考えました。いま流行っていなくてもいいから、とにかく安定した市場のものを選んだんです」
2つ目に、作業が分解しやすいこと。ハンバーガーは調理工程がはっきり分かれている。パティを焼く、野菜を切る、バンズに挟む、ポテトを焼く、ドリンクを作る??それぞれのパーツを最後に組み合わせれば商品が完成する。
「例えばパスタだと、麺をゆでたり具材を炒めたりと、ひとりで一から十まで作らなければいけません。でもハンバーガーは分業がしやすく、自分の持ち場がはっきりしています。訓練の場としてすごく適していました」
3つ目は、差別化がしやすいこと。
「例えばプリンは、工場で作っても十分美味しい。作り置きや大量調理でも品質が保てるものは、結局、機械化された大手には価格で勝てない可能性が高いと考えました。逆に言うと僕たちの強みは、利用者さんたちが持ち前の真面目さと強みを活かして、手間暇のかかる調理も丁寧にやってくれること。みんなが集まって手作業することで、おいしくなるものを作りたかった。それがハンバーガーだったんです」