「早々に、『これだ!』というハンバーガーができたんですか?」
私の問いに、平澤さんは目をつむって首を横に振った。
「これだ!と思えるものになるまでに、1年以上かかりました。当初は野菜が入っていなかったし、ソースも納得いくものではなかったんです」
実は、いまのバーガーとはまったく違うコンセプトからスタートしていた。最初は豚肉と牛肉の2種類で、野菜も入っておらず、ガツンと肉を食べさせるステーキバーガーのようなイメージだったという。
「都内のハヤシライス屋さんを間借りさせてもらって、半年ほどテスト販売を続けていたんです。豚肉バーガーのほうがリピート率は高かったんですが、メニューを絞ってクオリティを磨こうと、牛肉一本に決めました」
30代の女性客を中心にアンケートを取り、その声を頼りに改良を重ねた。ターゲットを絞ったのは、地域に根差した店にするため、健康を気にする人にも週2~3回通ってもらえるような店にしたいと考えたからだ。そして行き着いたのが、野菜とパティ、バンズの一体感を楽しむバランス型のハンバーガーだった。
ここまで決まれば、最後はバーガーの味を大きく左右するソースのみ。理想の味を求めて、平澤さんはハンバーガーの本場であるロサンゼルスに飛んだ。
現地で超人気店として知られる「In-N-Out Burger(インアンドアウトバーガー)」をはじめ、有名店を回って食べ歩き、そのイメージを日本に持ち帰った。
「一緒に開発を進めるシェフに、アメリカで食べた味を言葉で伝えなければいけなくて、それがまた大変でした」と振り返る。
ただし、目指したのはアメリカの味の完全再現ではない。日本人の口に合わせる必要があったし、なにより、BURGER TERRACEのバンズは「はるゆたか」を使ったもっちりとして小麦の香りが強いタイプ。アメリカのパサッとしたバンズとは前提が違う。
「このバンズに合う味にしなければいけなかった。だから、これを増やしてみる、あれを減らしてみる、やっぱりこっちの方が良かったな……と、何度も何度も検証を繰り返しました」
そうしてできたのが、現在のハンバーガーだ。1年以上に渡る試行錯誤の日々を聞いて、思わず「もう、結晶のようなバーガーですね」と言うと、平澤さんは少し照れくさそうに笑い、こう語った。
「お客様には、商品が良いと思って来ていただきたいんです。『福祉だから応援しよう』という気持ちで利用していただくのも、結果的にはありがたいことです。でも、それが前面に出てしまうような店では、きっと持続性がない。だから、商品が本当に良いから来てもらえる店にしたかったんです」
「障がいのある人たちが働く場所だから」ではなく、「おいしいから」「また食べたいから」そう思ってもらえる店を目指す。その覚悟に、「バンズの神様」と呼ばれる高橋さんをはじめとする人たちが共鳴し、惜しみない協力を寄せてくれたのかもしれない。
取材後、ハンバーガーを食べ終えてトレーを片付けようとしたとき、「ありがとうございました!」と元気のいい声が飛んできた。声のする方を見ると、厨房からこちらをまっすぐ見ている利用者の姿があった。「ごちそうさまでした、おいしかったです」と伝えると、今度は少し柔らかい声で「ありがとうございます!」と返ってきて、おいしいものを食べた満足感に、もう一枚何かが重なったような心地がした。
平澤さんによると、現在もバンズやパティの改良を重ねており、今後さらにパワーアップする予定だという。次に店を訪れるのが、楽しみでたまらない。