味の追求もさることながら、同店の環境設計も魅力のひとつだ。
ドイツのハノーバー工業デザイン協会が主催する国際的なデザイン賞「iF DESIGN AWARD 2024」受賞デザイナーが監修した内装は、白とブラウンを基調としており、落ち着いた空間。「地域に根差した店にしたい」という言葉の通り、ベビーカーが通れる十分なスペースや、ゆったりとくつろげる座席が、ほかのハンバーガー店との差別化にもなっている。


店内に目をやると、世代が異なる4人組や、小さな兄妹を連れた女性がボックス席でにぎやかに過ごしている。ハンバーガーショップといえば回転率を重視する、「くつろぐ」とは逆の空間をイメージしがちだ。でもこの店では、誰も時間を気にしていないように見えた。
小さな息子さんと同店を訪れた男性は、「パティがジューシーでおいしくて、料金を払って3枚ほど追加したいくらい」と笑顔を見せ、「あと、ポテトが気に入った」と続けた。
「美容系の仕事をしているので油で揚げたポテトは避けていたんです。ここのポテトはコンベクションオーブンで焼いているので安心。十数年ぶりに食べられて、うれしかったです」
そして、利用者が働きやすい環境づくりにも余念がない。
まず目を引くのが、セミオープンキッチンの設計だ。客席から厨房内が見える造りになっている。
「サービス業における対人コミュニケーションにも慣れていただきたいので、あえて完全クローズにはしていません。『見られている』ということを意識して働く経験も大切にしました」(平澤さん)
ただし、利用者の習熟度に応じた配慮もある。店舗ロゴの裏側はドリンクを作るスペースだが、ここは客席から目線が切れる場所になっている。ドリンク作りは難易度も低く、取り組みやすい作業だ。皿洗いのスペースも同様に、客の目線が届かない場所に配置されている。
「利用者さんによっては、最初は人前が難しいという方もいます。だから、お客様の目線を受けるところと受けないところを段階的に選べるような環境設定にしています」
さらに、サポート体制も手厚い。店舗の奥には、休憩室とは別に面談室が設けられており、利用者は毎日、出勤時と退勤時の2回、支援員と1対1で面談を行う。
「利用者さんは全員、中期・長期の目標、毎月の目標を持っています。その上で出勤時に、その日の目標を設定します。たとえば『わからないことがあったときに、自分から支援員に確認できる』というのも目標のひとつ。困りごとがあったときにどう対処するか、それ自体が目標設定になるんです。これはどんな職場に行っても応用がきく、汎用性のある力。こうした細やかな目標設定が、うちの事業所ならではだと思います」