現在70歳の青山さんは、さすがにゆっくりとしたペースだ。「重いなあ」「ああ、疲れた」というぼやきが聞こえる。でも、ほとんど休む様子もなく、山を上り下りしてひとつ、ふたつとバケツを空にしていく。ほんとに70歳!? っていうか、なぜつらい思いをするとわかっていて、手伝いに来るんですか? と尋ねると、照れくさそうに笑った。
「マークに会いに来てるんだ。マークは素直だからな」
着実に仕事をこなす様子を見て山に慣れた人なのかと思ったら、ぜんぜん違った。定年退職するまでは歯科の商社で働いていたそうで、たまたま近所に住んでいて、ギャニオンさんとメープルシロップのことを知り、クラウドファンディングで支援したという。ギャニオンさんとは「メープル仲間」という感じで、仲がよさそうだった。70歳で新しい友人を作り、1週間に1回は一緒に山に入って作業を手伝う。なんだかステキだ。
僕は46歳、この場で最年少。気合いを入れ直して、バケツを運んだ。すっかり日が落ちて、何往復をしたかわからないぐらいヘロヘロになった頃、この日の作業は終わった。後で聞いたところによると、僕ら3人で樹液240リットルを回収したそうだ。
午前中に回収したチューブのほうは、286リットル。チューブをつければ自動的にタンクに樹液が溜まるのだから、3人で半日かけてバケツを巡るよりも圧倒的にコスパ、タイパがいい。いずれ200本のカエデすべてにチューブをつけるんですか?
「来年、(チューブをつけるのは)100本にしたいです。でも、バケツも残します。タンクからタンクに樹液を移すだけ、面白くない。山でカエデとコンタクトするのが楽しいです。ここに来るお客さんも喜びます」
翌日に開催された「ハーベストイベント」で、この言葉を実感した。