当別町の森では、チューブを付けているカエデはおよそ200本中の66本で、ほかは伝統的なタップ(蛇口)&バケツで樹液を採っている。金曜日の午後は、ギャニオンさんとバケツの回収に行った。その際にもうひとり、クラウドファンディングで支援して以来、ギャニオンさんと一緒に山に入って夏には草を刈り、木を倒し、冬になれば樹液の採取を手伝いに来るという青山さんも助っ人に加わった。
アルミのバケツには雨や雪、ゴミが入らないように蓋がしてある。その蓋を開けると、溢れ出しそうなほどたっぷりと樹液が溜まっているものがあった。1本の樹からこんなにたくさん樹液が出るのかと思うと、不思議な気持ちになる。一方で、ほんの少ししか溜まっていないバケツもあった。樹によって、毎日、採れる量が違うそうだ。
アルミのバケツから、プラスチックのバケツに樹液を移す。その樹液を、山の上に停めてあるスノーモービルが引いてきた大きなタンクに流し込む。これが一連の作業だ。
プラスチックのバケツの容量は20リットルで、単純計算すると満杯になったら20キロ。平坦な道を歩くとしても、20リットルの液体をバケツに入れて運ぶのは神経を使うだろう。それが、こちらは雪が積もった道なき山のなか。そのうえ、カエデは斜面に生えていて、スノーモービルまで上り坂だ。もし躓いたり、転んだりして樹液をこぼしたら、それは希少な商品をぶちまけたのと一緒……と思うと、怖くてバケツを満杯にはできない。3分の2ほど入れたら、スノーモービルを目指す。
この作業……想像以上にハードだった。バケツに半分でも約10キロ。スノーシューズがなければ太ももまで埋まるような雪深い山のなか、絶対にこぼしてはいけないと慎重に運ぶ。あっという間に、体力も精神も削られた。でも、泣き言を言っている場合じゃない。ギャニオンさんは鼻歌まじりでどんどんバケツを運んでいる。2月の北海道、よく冷えた山中で汗をかいてハアハア言っている僕に、ギャニオンさんは笑顔でこう言った。
「一度にたくさん運ぶと重くて、疲れます。それは、楽しくない。ちょっとずつ、ちょっとずつなら気持ちいい!」
なるほど、ちょっとずつね……と思ってギャニオンさんのバケツを見たら、僕が一度に運んでいた量よりも多かった。力持ち!