それでは、どう土を作るのか。参考にしたのは、化学肥料などない1904年に世界一に輝いた当時の生産者の手法だった。
「お米の農家さんからワラと米ぬかをもらってきて、浜名湖からモクという海草と牡蠣殻をいただいてくる。モクヤはミネラルとマグネシウムが豊富で、昔は肥料になっていたんです。これを海草、わら、米ぬか、海草、わら、米ぬか、って積み上げていって、寝かすんですよ。それを何回かかき回して攪拌することによって、米ぬかの菌で発酵していく。それを畑に入れてあげるんです」
肥料を手づくりするだけでなく、農地に種を蒔いた後も手間暇のかかる道を選んだ。
落花生の産地では、一般的に芽の周囲にビニールを張り巡らせている。そうすると地面の温度が上がって発芽も早くなるし、雑草も生えないという一石二鳥の方法だ。
しかし、落花生の実がなる段階になるとビニールを破いで外すか、そのまま土のなかに埋めて放置するという手法がとられている。杉山さんは「破けばゴミになるし、放置すれば環境に悪いから」とビニールを敷かないことにした。
その結果、自然の肥料で肥えた土地に生えてくる無限の雑草との格闘が始まった。杉山さんの仕事時間は、朝6時から12時までと、15時から19時まで。夏の間、この計10時間をずっと草抜きに費やしてきた。夏場の草抜きを想像し、思わず「はあ」とため息を漏らすと、杉山さんは笑った。
「多分、素人だからできたんだと思うんですよ。いろいろ知りすぎちゃってると、常識に縛られるし。確かに手間はかかりますよ。でも、はじめに簡単な方法を覚えちゃうとそれにしがみつくでしょ。最初に自分の体をしっかり使って、難しいこと、大変なことはやっておけば、だんだん慣れてきて、そのうち苦じゃなくなると思ってます」

川内イオ